険しく荒々しい岩尾根が特徴の妙義山。日本二百名山のひとつであり、赤城山・榛名山とともに上毛三山にも名を連ねています。岩が連なった山容は、大分県の耶馬渓(やばけい)・香川県小豆島の寒霞渓(かんかけい)と並んで日本三大奇景に選定。日帰り登山ができ、鎖場だらけの絶叫必至・上級者コースがある一方で、石門を巡る人気コースは初心者でも挑戦可能です。本記事では妙義山の魅力や難易度別コース、周辺おすすめスポットなどを紹介します。
妙義山の基本情報と3つの魅力
妙義山は群馬県の南西部に位置する、標高1104mの山です。実は「妙義山」という名の山はなく、周囲の山の総称。金洞山・白雲山・金鶏山などの「表妙義」と谷急山・御岳・丁須の頭などの「裏妙義」にわかれており、山頂は妙義山最高峰である白雲山相馬岳のことを指します。
岩が生えたような荒々しい山容は、日本百景にも選定。火山活動によりできたカルデラが雨風を長年受けたことで浸食され、現在のような切り立った岩尾根ができたとのこと。
「日本近代登山の父」であるウェストンが、妙義山で日本人に初めて「ロープを使用した2人で岩山を登る技術」を教えたことから、「近代登山発祥の地」といわれています。
山の名前 | 妙義山(妙義山) |
都道府県 | 群馬県 |
標高 | 1104m |
天気・アクセスなど | 詳細情報 |
魅力その①:鎖を用いた岩登りはスリル満点!
妙義山の魅力1つ目は、スリルを楽しめることです。妙義山といえば岩場の連続。最長約30mの鎖場もあり、ほぼ垂直の崖が相次ぐ妙義山は、スリルを求めて挑戦する人があとをたちません。
一方で滑落事故も多発しており、落下したらケガは不可避。事故防止のため、適切な装備のもと登頂しましょう。
「初心者向け」とされているコースでも鎖場があるので、登山経験が浅い方や高所恐怖症の方は慎重に検討することをおすすめします。
魅力その②:恐怖の先にある360度の大パノラマ
妙義山の魅力2つ目は、360度見渡せる大パノラマです。稜線上からの風景は言葉を失うほどの絶景。登ってきた岩と下界が一望できます。この世のものとは思えない絶景は、難関ルートを突破した人しか見られません。山頂に立てば、ご褒美のような光景が広がっていることでしょう。
また、山内にある石門も有名スポットです。妙義山には4つの石門があり、特に第4石門は巨大な岩のアーチになっていて壮観。妙義山には複数の奇岩がありますが、なかでも名の知られている「大砲岩」が第4石門のアーチからのぞけます。また、第4石門の脇から見られる絶景、「日暮の景」も見逃せないポイント。
山頂だけでなく、ルート途中も景色を楽しめるのは妙義山の魅力ですね。
魅力その③:妙義といえば紅葉!岩と彩りのコラボレーション
妙義山の魅力3つ目は紅葉。ダイナミックな岩々を彩る紅葉は、息をのむほど美しいです。「群馬県民ならば誰しも暗唱できる」という郷土かるた、上毛かるたにも「もみじの映える妙義山」として登場しています。
見ごろは例年11月上旬~下旬です。
また、「妙義といえば紅葉」で有名ですが、実は桜の名所でもあります。そびえたつ岩をバッグに45種・5000本の桜が咲きほこり、紅葉に負けず劣らずの絶景。妙義山に行くのであれば秋、または春がおすすめです。
妙義山の難易度別おすすめコース
岩場を登る技術が必要な妙義山ですが、上級者だけでなく初心者が挑戦可能なコースもあります。ここでは難易度別にコースを紹介。実力に応じてコース選びの参考にしてください。
【初心者~中級者】石門巡りコース
①中之嶽神社登山口→10分→②石門入口→1時間5分→③石門広場→5分→④天狗の評定→3時間30分→⑤石門入り口→10→分→⑥中之嶽神社登山口
必要日数 | 日帰り |
コースタイム(休憩を含まない) | 5時間 |
距離 | 5.1㎞ |
標高差 | 上り:588m 下り:581m |
石門巡りコースは中之嶽神社を発着地として4つの石門を巡る、妙義山で最も人気のコースです。妙義山のなかでは難易度が低く、初心者向けとされています。
石門巡りコースは落石の影響で通行止めとなっていましたが、2022年10月から2年半ぶりに待望の通行再開。ただし現在(※2023年6月執筆時点)も下記の2カ所は安全性に問題があり、迂回ルートを通る必要があります。
- 大黒の滝付近
- 第2見晴らし付近の鋼製階段
群馬県ホームページでコース状況が随時更新されているので、登山前にチェックするとよいでしょう。
石門巡りルートは「初心者でも登れる」とされていますが、鎖場がないわけではありません。本当に初心者向けなのか疑うような岩場もあり、実際に登った人からは「想像していたよりきつかった」という声も。
そんな石門巡りルートの難所を紹介します。
蟹のよこばい | 鎖を掴みながら横に平行移動。断崖絶壁。 |
たてばり | ほぼ垂直の崖上り。鎖の左側から足をかけると上りやすい。 |
つるべさがり | たてばりを上りきったと思ったら急激な崖下り。 ここが終わればしばらくは普通の樹林帯で一安心。 |
片手さがり | 再び崖下り。片手しか鎖を握れない構造。 つるべさがりより傾斜はゆるいものの、下りづらい。 |
天狗の評定 | 幅の狭い崖わたり。もはや鎖もない。 |
胎内くぐり | 両足をそろえて歩けないほどの幅。思わず足がすくむ。 |
このような情報を見ると心配になる方もいるでしょう。しかし驚くことに、地元の小学生は遠足でこのコースを登るとのこと。とはいえ、「小学生でも登れるのだから」と油断してはいけません。慎重に、安全第一でのぞんでください。
山頂まで行くコースではありませんが、鎖場を乗り越えた先に絶景が待っていますよ。
【上級者向け】表妙義縦走コース
①道の駅みょうぎ→10分→②白雲山登山口→30分→③大の字→25分④見晴→15分→⑤大のぞき→15分→⑥白雲山→30分→⑦妙義山(相馬岳)→1時間20分→⑧展望ポイント→1時間20分→⑨東岳→30分→⑩中之嶽神社→5分→⑪中之嶽神社登山口→1時間→⑫道の駅みょうぎ
必要日数 | 日帰り |
コースタイム(休憩を含まない) | 6時間20分 |
距離 | 9.6㎞ |
標高差 | 上り:1225m 下り:1227m |
表妙義縦走コースは、切り立った稜線上を縦走する上級者コースです。経験・度胸のほか、ロッククライミング技術が必要不可欠。石門巡りコースとは比べ物にならないレベルの鎖場が連続しています。
表妙義縦走経験者は「北アルプスの難所よりも難しいかも」という人もいるほど。多少経験を積んだ登山家が気軽に挑戦してはいけないコースです。このコースは、登山計画書の提出がないと登れません。登山口付近にある妙義神社に「入山カード入れ」が設置されているので提出してください。
それでは表妙義縦走コースにある、5つの難所を紹介します。
ビビリ岩 | その名とおり、挑戦者がビビる岩。前半はトラバース状、後半は垂直に上る。 多くの人が踏んでいるためツルツルして滑りやすい。 |
背ビレ岩 | 魚の背ビレのように細く長い岩場。幅は約50㎝で両サイドが切れ落ちている。 まさに断崖絶壁。 |
大のぞき | 30mの崖下り。足をかけるところがなく、足裏を岩にべったりつけて下る。 慎重に足を運ぶ必要あり。 |
鷹戻し | 垂直に近いはしごを上って鎖場へ。滑落事故が多発する表妙義の最難関。 |
2段ルンゼ | 表妙義の核心部。完全垂直のため足場を探すのが困難。 腕力頼みの空中懸垂状態。 |
表妙義縦走コースは恐怖との戦いですが、その先には岩の切っ先に立って360度見渡せる大パノラマが待っています。特に⑧展望ポイントの景色は圧巻の一言。
しかし無理は禁物です。厳しいと感じた方は「鎖場の途中で動けなくなる」などの事態におちいる前に、序盤で引き返しましょう。
登山口へのアクセス・各種情報
ここでは登山口ごとにアクセス方法や各種情報を紹介します。
妙義山へは可能であれば車で来るのがおすすめ。公共交通機関を利用する場合、最寄り駅からはバスがないため、タクシーでの移動です。
なお、高崎駅からレンタカーを借りるという手もあります。高崎駅から妙義山までは車で約1時間。登山後に観光も楽しむのであれば、レンタカーの利用も検討してください。
石門巡りコース登山口
車の場合は、中之嶽神社のふもとにある「県立妙義公園大駐車場」を利用できます。500台駐車可能な大型駐車場で、料金は無料です。上信越自動車道 松井田・妙義ICから約15分、下仁田ICから約25分で到着します。
電車の場合は高崎駅で乗り換え、JR信越線・磯部駅または上信電鉄・下仁田駅で下車。両駅ともバスがないため、タクシーを利用します。タクシー乗車時間はどちらも25分ほどです。
トイレは県立妙義公園大駐車にあり、自動販売機や売店もあるので飲み物などを買えます。また、自動販売機と売店は中之嶽神社の境内にも。こちらはもつ煮やみそおでんなどがいただける食事処もあります。観光地なので設備は充実しており、便利です。
表妙義縦走コース登山口
車の場合は、「道の駅みょうぎ」に併設されている「妙義山市営第2駐車場」に無料で駐車可能です。上信越自動車道 松井田・妙義ICから5分ほどで到着します。
電車の場合は、高崎駅からJR信越線に乗り換え、松井田駅で下車。こちらもバスはないため、10分ほどタクシーに乗って移動します。
白雲山登山口付近にトイレはないため、道の駅みょうぎで立ち寄りましょう。売店や自動販売機もあるので、飲み物等も購入できますよ。
妙義山Q&A
Q1:妙義山は一般人が登るには危険な山?
石門巡りコースは鎖場がありますが、初心者向けとされています。
稜線上を歩く縦走コースは完全に上級者向けです。初心者には危険なのでやめましょう。
Q2:妙義山へ登るときの装備は?
妙義山は登山コースによって装備が異なります。
石門巡りコースの装備
初心者コースでも鎖場があり転落の危険性があるため、以下を準備してのぞみましょう。
- ヘルメット
- 登山靴グローブ
- 地図
- 登山靴 など
「石門巡りコースは運動靴でも登れる」という意見もありますが、急勾配や鎖場を考えると登山靴のほうが安心です。
表妙義縦走コースの装備
表妙義縦走コースは以下の装備がないと登頂できません。
- ヘルメット
- 登山用グローブ
- 登山靴
- ザイル
- ハーネス
- カラビナ など
表妙義縦走コースは想像以上に体力を消耗するルートです。カロリー補給できるものと、多めの水分の持参を推奨します。登山計画書も忘れずに。
Q3:妙義山をひとりで登ることは可能?
妙義山は危険な場所が多数あるため、単独での登山はおすすめしません。
登山をともにする人がいない場合は、ガイドを申し込むと安心です。
妙義山の周辺おすすめスポット
妙義山の周辺には登山以外にも楽しめる場所がたくさん。ここからは妙義山の周辺おすすめスポットを紹介します。
とにかくすぐに汗を流したい!妙義温泉「もみじの湯」
妙義温泉「もみじの湯」は妙義山から最も近い温泉。下山後すぐに汗を流したい方におすすめです。露天風呂は妙義山の大自然を眺めながら入浴が可能。特に秋の紅葉時期は「絶景を楽しみながらの温泉」という贅沢な時間を過ごせます。
温泉は筋肉痛、神経痛、関節痛などに効能があるとされ、疲労困憊の体を癒すにはぴったりです。食事処もあり、妙義の地元食材を使用した料理もいただけます。
登山後はゆったりと温泉につかって、体をいたわりましょう。
営業時間 | 3~11月:10時~20時 12~2月:10時~19時 (いずれも30分前最終受付) |
休館日 | 月曜日(祝日の場合はその翌日) 年末(年始は営業) |
利用料金(3時間まで) | 大人:520円 子ども:300円 ※超過1時間ごとに追加料金あり |
公式ホームページ | 妙義ふれあいプラザ 妙義温泉「もみじの湯」 |
特大サイズのだいこく様がいる!中之嶽神社
中之嶽神社は石門巡りルートの発着地であり、運気・金運の上昇にご利益がある神社です。轟岩(とどろきいわ)をご神体としているため、拝殿と幣殿のみの本殿を持たない珍しい様式になっています。
そんな中之嶽神社は高さ20m、重さ8.5トンの「日本一のだいこく様」がいることで有名です。小槌を持っているのが一般的ですが、中之嶽神社のだいこく様が持っているのは剣。病や厄、悪性をはらい、福を招いてくださるとのこと。
妙義山を登る前に安全をお祈りしてはいかがですか。
群馬がほこる世界遺産!富岡製市場
富岡製糸場は日本発の本格的な機械製糸工場として、明治5年に設立されました。近代化のためにフランスの技術を導入した富岡製糸場は、当時世界最大規模の機械製糸工場。日本の養蚕(ようさん)・製糸業を世界一にしました。
第2次世界大戦の戦火を逃れた富岡製糸場は、主要施設が創設当時のまま残されている貴重な建造物です。
当時の機械が並ぶ工場内や、向上で働いていた女工の生活展示などを見学できます。見学時間は1時間ほどですが、歴史を感じる見どころがたっぷり。せっかく妙義山まで来たのであれば、世界遺産への立ち寄りをおすすめします。
開場時間 | 9時~17時(最終入場16時30分) |
休場日 | 年末(12月29日~31日まで) |
見学料 | 大人:1,000円 高校生・大学生:250円(要学生証) 小・中学生:150円 |
公式ホームページ | 富岡製糸場 富岡市観光ホームページ |
富岡製糸場へ来たならこんにゃくパークへ!
富岡製糸場に来たならば、車で10分ほどの場所にある「こんにゃくパーク」へ立ち寄るのがおすすめ。こんにゃくパークは「こんにゃくのおいしさと文化」を伝える施設です。
ちなみに、全国のこんにゃくの約9割は群馬県で生産されています。そんなこんにゃくパークでできることはこちら。
- こんにゃく工場見学
- こんにゃく手作り体験
- こんにゃく詰め放題
- こんにゃくバイキング
工場見学とバイキングは無料で利用できます。入場料もかかりません。バイキングにはこんにゃく料理の定番である煮物や炒め物だけでなく、焼きそばやラーメン、デザートまであります。すべてこんにゃくでできているとは思えないクオリティの高さ。健康的でとてもおいしいです。
こんにゃくパーク内に無料の足湯もあるので、お金を使うことなく登山後の疲れを癒し、空腹を満たすことができますよ。
営業時間 | 平日:9時~17時30分 土日:9時~18時 (最終受付は30分前) |
こんにゃく工場の稼働日 | 月~金曜日 |
こんにゃく手作り体験の料金 (要予約) | コースにより料金は異なる (※公式ホームページ参照) |
こんにゃく詰め放題の料金 | 500円 |
公式ホームページ | こんにゃくパーク公式ホームページ |