夫神岳(おがみだけ)は長野県青木村にある山で、日本百低山の一つです。登山道はよく整備されており、初心者の方でも登りやすい里山になります。
標高差500mほど、2時間ほどで登ることができます。道中に諏訪神社や観音さま、あずまやに水場もあり寄り道しながら楽しく登れる里山です。
この記事では、夫神岳の基本情報や魅力、登山コースごとの特徴などを紹介しています。夫神岳登山を計画している方や、興味がある方はぜひ参考にしてみて下さい。
夫神岳の基本情報と魅力
夫神岳の標高は、1,250mと長野県内では高い方の山ではなく、いわゆる里山と呼ばれ地元の人々とともに存在しています。
上田市街地から西側を見ると、ポッコリと独立峰のように見える小さな山が夫神岳です。西側には青木村の沓掛温泉、東側には上田市の別所温泉があり、温泉地に囲まれています。
夫神岳の歴史は古く、500年以上昔から雨乞いの山として親しまれており、山頂には九頭竜とイザナギノミコトを祀った祠があります。今でも行われている別所温泉の「岳の織」と言われる行事があり、反物を持って夫神岳に登り神事の後下山して雨乞いをしています。
夫神岳は1年中登ることが可能ですが、冬には積雪があり十分な装備と経験が必要です。初心者の方にもおすすめの時期は、春から夏にかけて山野草のお花が楽しめます。
山の名前 | 夫神岳(おがみだけ) |
---|---|
標高 | 1,250m |
エリア | 甲信越 |
詳細情報 | 夫神岳の地図・天気 |
魅力その①長野県東信地方の山々を望む眺望
夫神岳の魅力の一つに、展望の良さがあります。二つのコースはそれぞれ方角が異なり、異なった景色を楽しむことができます。
青木村コースは、夫神岳の北西面に位置し上部からは北アルプスの山々を一望することができます。また、別所温泉コースはその逆斜面である南東面に位置しており、塩田平の田園風景や湯ノ丸、浅間山などを望めます。
頂上からは、眼下にのどかな青木村の風景がひろがり、北東方面には東信地区を代表する四阿山や根子岳の眺望が広がっています。
景色を楽しみたければ、秋から春にかけての落葉している時期がおすすめです。また、冬には空気が澄んでいて遠くの山までくっきりと見えます。
魅力その②雨乞いの歴史「岳の幟」
長野県上田市は、全国的にも降水量の少ない地域で、特に夫神岳のある塩田平は降水量が少なく昔から水不足に悩まされてきました。
そこで、この地域の人々は夫神岳に雨乞いを行い恵みの雨を得ることができました。そのお礼に幟を奉納したのが「岳の幟」の始まりです。
毎年7月に行われており、夫神岳の頂上で祈りをささげた後に、幟を掲げて別所温泉に下り、地区内を練り歩きます。色とりどりの布のついた幟が何本も並びながら山肌を下ってくる光景は圧巻です。
時期を合わせて、岳の幟の雰囲気を味わいながらの夫神岳登山も面白そうですね。
魅力その③歴史深い伝統の温泉地
青木村には田沢温泉や沓掛温泉、塩田平の別所温泉に隣には鹿教湯温泉があり、夫神岳の周りには多くの温泉街があります。
青木村側の登山口近くには、沓掛温泉という温泉地があります。現在では旅館が2,3軒ては近隣の温泉地をはるかにしのぐほど賑わっていたようです。平安時代からある歴史の深い温泉で、登山の疲れを癒してはいかがでしょうか。
別所温泉は言わずと知れた温泉街で、多くの旅館があります。こちらも歴史は深く1400年以上前、長野県最古の温泉と言われています。趣のある温泉街を拠点にした登山旅行もおすすめです。
夫神岳の難易度別おすすめ登山コース
夫神岳の登山口は、西の青木村側と東の別所温泉側の2つあります。どちらの登山口からも550mほどの標高差で、2時間もあれば登ることができます。
【アクセス良好】貴重な湧水を祀る青木村ピストンコース
①青木村登山口→110分→②夫神岳山頂→80分→③青木村登山口
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム※ | 3時間10分 |
距離 | 約4.5km |
累積標高 | 約530m |
難易度 | ★☆☆☆☆ |
信州まるべりーオートキャンプ場付近に砂利の登山者専用駐車場があります。スペースは広く、15~20台ほど駐車可能です。駐車場には水洗トイレもあり、しっかり整備されています。
駐車場からは、トイレ脇にあるゲートを開閉して林道に入っていきます。案内板が充実しているので、迷うことはなく進んでいけます。10分ほどで「くらおかみ大明神」へ到着です。
この「くらおかみ」は水の神様で、頂上に祭られているのが「たかおかみ」という雨の神様だそうです。伝統ある雨乞い信仰のもとになっており、これが由来として「夫神岳」やふもとの地区を「夫神村」と呼ぶようになったと書かれています。
すぐ脇には「月波の泉」があり、のどの渇きを潤すことができます。また、周辺にはイチヤクソウの群生地もあり、休憩に適しています。ここから少し先で林道は終点となっており、登山道が始まります。
緩やかに大きく旋回しながら登山道を登っていくと、山頂まで600mの看板に出ます。ここからはジグザグと登っていく急登区間が山頂まで続きますので、ゆっくりいきましょう。
残り300mの看板からは、ややなだらかになり木々の間から北アルプスの山々が見えるようになります。看板の近くには展望ベンチがありますので、少し休憩しても良いでしょう。ただし、木々に葉がある季節だとあまり眺望はのぞめません。
ほどなくして山頂に到着です。丸太でできたベンチが一つと、祠が二つあります。眼下には青木村ののどかな風景が広がっており、遠くは北アルプスや浅間山などの山々を見渡すことができます。ただし、こちらも木々が落葉していない時期には、少し邪魔になってしまいます。
【雨乞いの歴史”岳の幟”】初心者でも簡単な別所温泉ピストンコース
①別所温泉登山口→30分→②岩屋観音→50分→③あずまや→30分→④夫神岳→15分→⑤あずまや→30分→⑥岩屋観音→20分→⑦別所温泉登山口
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム※ | 2時間55分 |
距離 | 約4.2km |
累積標高 | 約580m |
難易度 | ★☆☆☆☆ |
別所温泉側の登山口は、駐車場がありません。路肩に少々スペースがあるので、そちらに停めるようになります。夫神岳登山口と登山ルートの看板が立っていますが、トイレ等の施設はありません。
上田電鉄別所線の終点・別所温泉駅から歩いて20分ほどの距離ですので、公共交通機関でのアクセスが良いでしょう。
登山道入ってすぐに立派な諏訪大明神があります。30分ほど樹林帯の整備された登山道を行くと、岩谷観音の分岐です。奥に金色の観音像が鎮座しており、少し寄ってみても良いでしょう。
林道と6,7回ほど交差しながら進みます。完全に無舗装の林道ですが、駐車スペースもあり上の方まで車で入ることができます。
林道との交差が終わるとあずまやに到着です。残念ながら木々が生い茂っている時期は眺望がよくありません。ここから階段などを登りながら30分ほどで山頂です。
登山口へのアクセス・各種情報
青木村登山口は、広い駐車場がありますので車でのアクセスがおすすめです。バスなどの公共交通機関では、本数も少なくアクセスが難しいでしょう。
一方で、別所温泉登山口は駐車場がありません。駅から歩いても20分ほどですので、公共交通機関でのアクセスがおすすめです。
青木村登山口
登山口情報
15~20台ほどが駐車できる無舗装の広い駐車場があります。ただし、駐車場までは細い無舗装の砂利道を通っていきますので、運転に慣れていない方は注意が必要です。
駐車場には、比較的新しい水洗トイレがあります。冬季には閉鎖となります。また、その他の施設は駐車場にはありません。
登山口までのアクセス
上田市方面から車で
上田菅平ICから車で約30分
上田市方面から公共交通機関で
上田駅から千曲バス・青木線と徒歩で約1時間10分
別所温泉登山口
登山口情報
別所温泉側の登山口には、駐車場がありません。路肩にわずかなスペースがあり、登山する方は停めていかれますが迷惑にならないように注意が必要です。
上田電鉄別所線・別所温泉駅からは、北向観音の方向へ進んでいき更に奥の林道脇に登山口があります。距離は1.5kmほどとそこまで遠くはありませんが、標高差は150mほどあります。
「夫神岳登山口」と書かれた看板と山域を案内する看板が立っているので、登り口は見つけやすくなっています。トイレなどの設備はありません。
登山口までのアクセス
上田市方面から
上田菅平ICから車で約30分
上田市方面から公共交通機関で
上田駅から、上田電鉄別所線と徒歩で約50分
夫神岳のQA
夫神岳に関する質問で多いのは、登山ルートや気温・積雪などに関することです。このような質問について以下QAを紹介します。
夫神岳の登山レベルは?初心者でも登れる?
夫神岳の登山ルートどちらからでも、初心者の方でも十分に登ることができます。標高差500m強で、片道2時間ほど見ておけば休みながらのゆっくりとした山行で頂上まで行けます。
また、登山道自体はよく整備されていますし、急登はあれど岩場・鎖場はありませんので心配いりません。
一点だけ注意が必要なのは、青木村の登山口へ向かう林道は途中から無舗装のすれ違いが困難な幅になります。運転に慣れていない方は少し注意した方が良いでしょう。
夫神岳の気温は?どんな服装で行けばいい?
夫神岳のある青木村の月ごとの平均最低気温と最高気温を下記の表にまとめました。冬の最高気温は1桁ですが、夏は30℃を超えてきます。また、同じ月でも最高と最低が10~15℃ほどの差があり、寒暖差の激しい地域です。
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
最高 | 6 | 7 | 11 | 18 | 24 | 27 | 30 | 31 | 26 | 20 | 14 | 8 |
最低 | -6 | -5 | -2 | 4 | 10 | 15 | 20 | 20 | 16 | 8 | 2 | -3 |
夏は非常に暑くなります、熱中症予防をきちんとするようにしましょう。7,8月を除けば、日によっては冷え込む場合があるので春や秋でも上着を持っていくといいでしょう。
冬期間はしっかり冷え込みますので、冬の低山用の防寒着に念のためダウンジャケットなどを持っていくと安心です。ただし、積雪は少ない地域ですので、降雪直後でない限り雪装備は滑り止めチェーンで十分です。
夫神岳で見られる山の花は?見ごろは?
山の花 | 見ごろ | 山の花 | 見ごろ |
---|---|---|---|
山桜 | 4月 | キオン | 8~9月 |
ツリフネソウ | 8月 | ツルリンドウ | 8~9月 |
キツリフネソウ | 8月 | ミヤマウズラ | 8~9月 |
フシグロセンノウ | 8月 | トリカブト | 9月 |
シデシャジン | 7~9月 | ホトトギス | 9月 |
夫神岳の花で最も存在感のある別所温泉コースの途中にある大きな山桜は、毎年4月中旬から下旬ごろに見ごろを迎えます。
そのほかは、夏のお花が多い印象です。8月には登山道のあちこちで、小さなかわいらしいお花が咲いています。一つひとつに特徴があり、何という名前のお花なのか調べながら登るのも良いですね。
夫神岳周辺のおすすめ山旅スポット
沓掛温泉 小倉乃湯
夫神岳登山口のふもとにある小さな温泉街の共同浴場「小倉乃湯」で、登山の疲れを癒してはいかがでしょうか。
建物は平成10年にリニューアルしきれいな見た目になっていますが、入り口脇には以前から使っているであろう古い看板が掲げられており、この共同浴場の歴史が伺えます。
入浴料はたったの200円で、2種類の源泉がそれぞれの浴槽にこれでもかというほど注ぎ込まれている源泉かけ流しの贅沢な温泉です。
別所温泉の共同浴場
別所温泉には3つの共同浴場があり、それぞれ200円で入浴することができます。
3つの共同浴場にはそれぞれの歴史があり、石湯は「真田幸村隠しの湯」、大師湯は「比叡山延暦寺の座主円仁慈覚大師ゆかりの湯」、そして大湯は「木曽義仲、北条氏ゆかりの湯」と呼ばれています。
別所温泉は、青木村の温泉とは違って熱々のお湯になります。大師湯は源泉かけ流しで、泉温44.9℃と湯船は適温で非常に気持ちのいい空間となっています。
道の駅 あおき
夫神岳のふもと、青木村の国道沿いにある道の駅で、地元の農産物や特産品を販売しています。特に秋には、地元でとれた立派な大きさの松茸が2本入って1万円ほどで売られており、開店とともに争奪戦になるほどの人気商品です。
農産物直売所では、タケノコやフキノトウ、こごみやうどなどの里山の山菜も非常に人気となっています。ゴールデンウィークには春祭りが行われ、山菜の天ぷらがふるまわれるなど、地元の農産物を存分に堪能することができます。ぜひ登山帰りに寄ってみてはいかがでしょうか。