由布岳は大分県由布市と別府市にまたがる標高1,583mの山で、日本二百名山に選ばれています。2200年前に噴火した形跡の残る活火山です。
由布岳は山容が円すい形で裾野が長く豊後富士とも呼ばれています。山頂は双耳峰で西峰(標高1,583m)と東峰(標高1,580m)の2つの山頂を持っている山です。西峰は鎖場の連続する上級者向きのピークで、東峰は比較的危険箇所の少ない初心者でも登山可能なピークです。由布岳のコースタイムは約4時間30分で、日帰り登山に適しています。
由布岳の基本情報と魅力
由布岳の登山道は、スーパーボランティア尾畠春生さんをはじめとする由布岳を愛する方々のおかげで、整備が行き届いています。最もポピュラーな正面登山ルートは歩きやすく迷いにくい登山道なので、登山初心者の方にもおすすめです。
山の名前 | 由布岳(ゆふだけ) |
標高 | 1,583m |
エリア | 九州・沖縄(大分県) |
詳細情報 | 由布岳の地図と天気 |
基本情報
由布岳はトロイデ式の活火山です。麓には火山活動の恩恵を受けて豊富な湯が湧き出る由布院温泉があります。由布院は源泉の数や湧出量が全国2位の温泉地です。由布院の街から眺める由布岳はとても雄大で、日本百名山の著者である深田久弥が「百名山に選出しなかったことを悔やんだ」というエピソードが残っています。
由布岳が登山客でもっともにぎわうのは、5月から6月です。この時期は、九州の高山に生息するツツジの一種であるミヤマキリシマの最盛期です。
また、由布岳は秋に山全体が紅葉に包まれます。10月から11月も多くの登山客が訪れます。
由布岳の魅力①山頂から全方位に広がる絶景
由布岳山頂は西峰も東峰も周囲をさえぎるものはなく、全方位素晴らしい景色が広がります。西に九重連山、東に鶴見岳(標高1,374m)とその奥には別府湾が見渡せます。
由布岳の魅力②スキルに合わせて選べるピーク
由布岳には山頂の手前にマタエと呼ばれる西峰と東峰の分岐点があり、この地点まで急登は少なく初心者でも安全に登れます。しかし、マタエから西峰と東峰のどちらの山頂をめざすのかで、登山の難易度が大きく変わります。
西峰へ向かうルートは鎖場が連続する難易度の高いコースで、東峰のルートは比較的安全な登山道です。さらに、西峰と東峰を結ぶお鉢巡りという山頂の火口を1周するルートがあり、登山者のスキルに応じて楽しみ方を選べます。
由布岳の魅力③季節ごとに変化する山肌の美しい色彩
由布岳は季節ごとに山肌の色を変える色彩豊かな山です。
由布岳の麓は3月初旬に、害虫駆除と景観保全が目的で野焼きが行われます。野焼きにより枯草色だった山肌は、黒く染まります。しかし、野焼き後の大地には新芽が芽吹き、5月上旬にはまばゆい新緑に山全体がおおわれるのです。さらに、5月中旬には登山道のミヤマキリシマが、かわいいピンク色の花をつける様子が見られます。
また、広葉樹の樹林帯でおおわれている由布岳は、秋になると山肌が赤や黄色に色づきます。10月から11月の紅葉のシーズンには、燃えるような色彩を楽しめるでしょう。
由布岳の難易度別おすすめ登山ルート
活火山の由布岳は大きな火山岩が登山道をふさぐ場所があったり、がけのような急峻な箇所があったりするので、自分のレベルに合った登山ルートを選ばなくてはいけません。
由布岳にはさまざまな難易度の3つの登山ルートがあります。
- 正面登山口ルート(初心者向け)
- 西登山口ルート(初心者から中級者向け)
- 東登山口ルート(中級者以上向け)
正面登山口ルートは由布岳で最もメジャーな登山道です。鎖場のない東峰を選べば、比較的難易度の低いコースで初心者におすすめです。
西登山口ルートはJR由布院駅から徒歩15分のアクセスのよい登山口からスタートします。西登山口ルートは正面登山口ルート同様、危険な箇所のない初心者が安全に登山できるコースです。ただし、正面登山ルートよりも距離があるため、体力が必要な登山道です。
東登山口ルートは3つの登山道の中で山頂までの距離がもっとも短いコースです。しかし、登山道には岩が多く勾配がきついため、中級者以上向けのコースといえるでしょう。
整備が行き届き初心者も安心|由布岳正面登山口ルート
①由布岳正面登山口→3時間10→②由布岳(東峰)→1時間40分→③飯盛ヶ城→40分→④由布岳正面登山口(休憩1時間含む)
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム | 5時間30分(休憩1時間含む) |
距離 | 6.5km |
累積標高 | 864m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
由布岳登山は麓の大草原がスタート地点です。
雄大な由布岳の山容を眺めながら登山道を進みます。草原をしばらく行くと樹林帯が始まります。
樹林帯に入ると緩い上り坂です。登山道はよく整備されていてとても歩きやすいです。
樹林帯を進むと合野越に到着しました。
ここは西登山口ルートとの合流地点でもあります。合野越からさらに樹林帯が続きます。
合野越からの登山道は、つづら折りで勾配は緩く登りやすいです。標高が上がると徐々に背の高い樹木が減少し、見晴らしのよい地点があらわれます。
つづら折りの登山道からは、飯盛ヶ城(標高1,057m)や由布院の街を眼下に見下ろせます。
つづら折りの道が終わると登山道は急登に変化しました。急登を登るとマタエと呼ばれる西峰と東峰の分岐点に到着します。
西峰は鎖場がある難易度の高いルートなので、今回は東峰をめざしました。東峰に登るコースも気を抜くと危険な道なので、慎重に登山道を進みます。山頂までは岩も多くきつい坂道です。
急登を登り切ると山頂に到着です。
東峰は周囲にさえぎるものが何もなく360°素晴らしい景色を眺められます。
山頂で眺望を楽しんだあとマタエに下り、下山を開始しました。
今回の登山では、下山途中で合野越から西登山口ルートに入り飯盛ヶ城に立ち寄ります。
飯盛ヶ城は一面草原で山頂の景色の素晴らしい山です。飯盛ヶ城からは由布岳を見上げたり、遠くの美しい山並みを眺められます。
飯盛ヶ城から正面登山口に戻るルートがあり、その道は大草原が登山口まで続く気持ちのよいコースです。
由布岳正面登山口駐車場情報
標高 | 780m |
駐車スペース | 無料駐車場30台 有料駐車場50台 |
駐車料金 | 有料駐車場は500円 |
トイレの有無 | あり |
登山ポストの有無 | あり |
由布岳正面登山口には隣接する無料駐車場と有料駐車場があります。駐車場から登山口までの距離は約100mです。駐車場にはトイレが設置されていて、登山ポストは駐車場から県道を挟んだ反対側にあります。
由布院駅から徒歩15分でアクセス抜群|由布岳西登山口ルート
①西登山口→3時間10分→②由布岳(西峰)→1時間10分→③由布岳(東峰)→2時間20分→④西登山口(休憩50分含む)
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム | 6時間40分(休憩50分含む) |
距離 | 11.3km |
累積標高 | 1,248m |
難易度 | ★★★☆☆ |
西登山口から登山道に入るとすぐに樹林帯に入ります。
西登山ルートは勾配はゆるやかですが、樹林帯が長く続くコースです。
深い樹林帯を進むと、急に景色が広がり見晴らしのよい場所があらわれます。
周辺には巨石群があり、大自然が作り出した神秘的な風景を眺められるでしょう。登山道は再び樹林帯に変わり水場を過ぎると、飯盛ヶ城を眺められるポイントがあらわれます。
飯盛ヶ城の分岐を過ぎると合野越に到着しました。ここから正面口登山道と合流します。
つづら折りの道を登りマタエにたどりつきました。
今回は、西峰に登りお鉢巡りで東峰をめざすルートを選択しました。西峰は鎖場があり難易度の高い岩肌を登ります。
鎖場には障子戸と呼ばれる垂直に近い絶壁を横に移動する箇所があり、由布岳西峰の最大の難所です。障子戸を通過すると、息つく間もなくさらなる鎖場があらわれます。
危険な鎖場をいくつも越え、急登を登りきると西峰に到着です。
西峰からの眺めは美しく景色を堪能しました。その後、由布岳の西峰から東峰まで火口を一周するお鉢巡りを行います。お鉢巡りはアップダウンが激しく、険しい岩場を通る難所の多いルートです。
由布岳のお鉢巡りは、西峰から約1時間で東峰に到着します。
東峰の景色を楽しんだあと、東峰側からマタエに下り合野越を経て西登山口ルートで下山しました。
由布岳西登山口駐車場情報(タイムズ湯布院金鱗湖)
標高 | 460m |
駐車スペース | 30台 |
駐車料金 | 平日 上限440円 土日祝 上限660円 |
トイレの有無 | なし |
登山ポストの有無 | なし |
西登山口には登山者向けの専用駐車場はありません。西登山口で駐車場を利用する場合は、金鱗湖周辺の有料駐車場を利用してください。
コインパーキングにはトイレはありませんが、金鱗湖周辺には公衆トイレが3箇所あるのでそこを利用しましょう。また、駐車場に登山ポストはないので、登山口に設置されている登山ポストを利用してください。
難易度高めで本格的な登山を楽しめる|由布岳東登山口ルート
①東登山口→3時間40分→②由布岳東峰→2時間→③東登山口(休憩1時間30分含む)
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム | 5時間40分(休憩時間1時間30分含む) |
距離 | 5.1km |
累積標高 | 775m |
難易度 | ★★★★☆ |
東登山口ルートは危険箇所が多いため、登山経験の豊富な人向けの登山道です。
東登山口ルートは樹林帯から始まります。岩場が多く崖のような箇所を登るため、注意が必要なコースです。
急登の岩場を登りロープ場を越えて登山道を進みます。
途中には断崖絶壁のような箇所があり、難所がいくつもあらわれます。険しい登山道ですが景色がひらけた場所からは、大分の街や高崎山、別府アルプスの美しい絶景が見られるでしょう。
断崖絶壁の鎖場をいくつも超える果てしない急登を登り切ると、東峰側のお鉢巡りの分岐点に到着します。
ここから東峰に登頂しました。
東峰で素晴らしい景色を堪能したあと、ピストンで東登山口ルートの険しい登山道を下山しました。
由布岳東登山口駐車場情報
由布岳東登山口には登山者の専用駐車場はありません。また、周辺に利用可能な有料駐車場もないため、多くの登山者は路肩スペースに駐車しています。
周辺に利用できるトイレはないので、登山口に来る前に済ませておくとよいでしょう。登山ポストは、登山口に設置されています。
由布岳のQ&A
Q.由布岳は初心者でも登れる山ですか?
A.由布岳は初心者でも登れます。ただし、西峰は鎖場のある険しい道で、滑落事故も起きているので、初心者は東峰をめざして登ることをおすすめします。
Q.由布岳の正面、西、東の3つの登山ルートの中で初心者向きではないのはどの登山道ですか。
A.東登山口ルートは初心者向きではありません。東登山口ルートは岩場や急斜面が多く危険な箇所があるので、初心者が登るなら正面登山口ルートか西登山口ルートをおすすめします。
Q.由布岳のミヤマキリシマが見頃なのはいつですか?
A.由布岳のミヤマキリシマが見頃なのは5月上旬から6月中旬です。由布岳に咲くミヤマキリシマは、登山道の標高によって咲く時期が異なります。登山道で満開でも、マタエより上の西峰や東峰では見頃を迎えていない場合があります。
由布岳の登山口へのアクセス・各種情報
由布岳の3つの登山口にはそれぞれ特徴があり、アクセスの利便性もさまざまです。
由布岳の正面登山口
正面登山口は由布岳登山でもっともポピュラーな登山口です。由布岳の正面登山口は車と公共交通機関の両方でアクセスできます。
由布岳の正面登山口へ車でのアクセス
由布岳正面登山口は九州横断自動車道の由布岳スマートICから約8kmです。由布岳スマートICを下りて県道11号(やまなみハイウェイ)を通ります。
由布岳の正面登山口へ公共交通機関でのアクセス
由布岳正面登山口には、最寄りのバス停があり、JR由布院駅から路線バスが出ています。由布院駅前バスセンター発の亀の井バス由布院線の別府駅西口行きに乗り、6つ目のバス停の由布登山口で降車します。由布院駅前バスセンターからの所要時間は約15分です。
由布岳の西登山口情報
由布岳西登山口には駐車場がないため、車でアクセスする場合は、金鱗湖周辺のコインパーキングに止める必要があります。由布岳西登山口はJR由布院駅から徒歩15分のところにあるので、公共交通機関のアクセスが非常に便利です。
由布岳の西登山口へ車でのアクセス
大分道湯布院ICから西登山口までの距離は約5kmです。由布岳西登山口には登山者用の駐車場がないので、金鱗湖にあるコインパーキングに駐車して登山口にアクセスします。金鱗湖から西登山口までの距離は約500mで徒歩3分です。
由布岳の西登山口へ公共交通機関でのアクセス
JR由布院駅から由布岳西登山口は徒歩でもアクセス可能ですが、由布院駅前バスセンターから最寄りの岳本バス停まで路線バスが出ています。岳本バス停から由布岳西登山口までの距離は約230mで徒歩3分です。
由布岳の東登山口情報
由布岳東登山口は周辺に駐車場はありませんが路肩に駐車するスペースがあるため、車でアクセスできます。
また、登山口の最寄りにはバス停があり、公共交通機関の利用も可能です。
由布岳の東登山口へ車でのアクセス
別府ICから由布岳東登山口までの距離は約11kmです。別府ICを下りて県道11号(やまなみハイウェイ)に入り、別府ロープウェイや城島高原パークを抜け由布岳東登山口に至ります。
由布岳の東登山口へ公共交通機関でのアクセス
由布岳東登山口への公共交通機関でのアクセスは、別府駅西口から由布院駅前バスセンター行きで猪の瀬戸バス停で降車します。猪の瀬戸バス停から由布岳東登山口までの距離は約1.3kmで徒歩21分です。
由布岳周辺のおすすめ山旅スポット
由布岳の麓にある由布院は日本有数の温泉地です。由布岳に登ったら由布院温泉でゆったり湯船につかって、登山の疲れをしっかり癒してください。
由布岳温泉
数ある由布院温泉の中で日帰り温泉を楽しむなら、由布岳温泉がおすすめです。由布岳温泉には内湯と露天風呂があり、入浴料も大人500円とリーズナブルです。内湯と露天風呂の両方から雄大な由布岳を眺められます。
由布岳温泉の泉質は単純温泉で筋肉痛や疲労回復に効能があります。登山後の体を癒すのにもってこいの温泉といってよいでしょう。
由布まぶし 心 金鱗湖本店
由布院を訪れたらぜひ食していただきたいのは、ご当地でしか味わえない郷土料理の由布まぶしです。
由布まぶしは豊後牛、由布の地鶏、九州産うなぎの3種類から選ぶまぶし料理で、薬味や赤だし汁を使って味を変え3度楽しめます。一番人気は豊後牛の由布まぶしで、もっちり食感の由布院の米にとろける柔らかさの豊後牛の相性がよく、ほっぺたがとろけるほどの絶品です。
登山のあとは由布まぶしで心と体を満たし、明日の英気を養いましょう。
金鱗湖
金鱗湖は由布院を代表する観光スポットです。湖底から温泉が湧き出ている金鱗湖は、冬の朝に湖面から霧がもうもうとたちのぼる幻想的な光景が見られます。
金鱗湖の見頃は冬の早朝ですが、それ以外の季節も湖の周りの美しい自然が心を癒してくれます。由布院を訪れたらぜひ金鱗湖を歩き、美しい景観を楽しんでください。
由布岳は自分の登山経験に合わせたルートを選んで楽しみましょう
由布岳は地元を中心とする多くの方のおかげで、登山道はよく整備されています。初心者でも安全に登れるルートから、上級者向けの難易度の高いルートまで登山道はバラエティ豊かです。山頂も難易度の高い西峰と初心者におすすめの東峰があり、登山のスキルに合わせてピークを選べます。
由布岳に登る際はしっかり登山計画を立てスキルに合ったルートを選択し、山頂の素晴らしい景色を楽しみましょう。