九州にある日本百名山は、火山活動が作り出した美しい山容と豊かな自然が特徴です。阿蘇山は大規模なカルデラや活動する火口が見どころで、霧島山は神秘的な噴気孔や巨大な火口湖があり魅力にあふれています。
どの山から登ろうかと迷ってしまいますよね。
そこでこの記事では、九州にある百名山の全6座を紹介し、山の特徴や登山の難易度についてお伝えします。
九州の日本百名山
九州には日本百名山に選ばれた山が6座あります。
山の名前 | 標高 | 登山難易度 | 登山日数 | 登山適期 |
①九重山(くじゅうさん) | 1,791m(中岳) | ★★☆☆☆ | 1泊2日 | 4月上旬〜11月下旬 |
②祖母山(そぼさん) | 1,756m | ★★★☆☆ | 日帰り | 4月上旬〜11月下旬 |
③阿蘇山(あそさん) | 1,592m(高岳) | ★★☆☆☆ | 日帰り | 4月上旬〜11月下旬 |
④霧島山(きりしまやま) | 1,700m(韓国岳) | ★★☆☆☆ | 日帰り | 3月下旬〜11月上旬 |
⑤開聞岳(かいもんだけ) | 922m | ★☆☆☆☆ | 日帰り | オールシーズン |
⑥宮之浦岳(みやのうらだけ) | 1,936m | ★★★★☆ | 2泊3日 | 4月上旬〜11月下旬 |
九州の百名山は6座全てが標高2,000m以下で、日帰り登山のできる山もあります。登山道のしっかり整備されている山が多いため、初心者でも登れる山がいくつもあるのです。
ただし、九重山、阿蘇山、霧島山は活火山として常時気象庁の観測対象となっている山なので、登山前に火山活動に関する情報を確認しましょう。
九州の日本百名山|九州の屋根と呼ばれる九重山
九重山は大分県玖珠郡九重町と竹田市久住町にある山々の総称で、29の山岳から構成されています。そのうち、標高1,700m級の山が9座連なっていて「九州の屋根」と呼ばれています。
九州の日本百名山|九重山の難易度
九重山は初心者でも楽しめる山です。
九重山の主峰久住山(標高1,786m)と大船(標高1,786m)の間にある湿地帯の坊ガツルにテント泊して、山々を縦走する上級者向けの楽しみ方がある一方、初心者が日帰り登山のできるルートも多くあります。
九州の日本百名山|九重山の魅力
- 山頂から360°のパノラマビュー
- 美しいミヤマキリシマの群生
- 燃えるように色づく秋の紅葉
山頂から絶景の360°パノラマビュー
九重山には1,700mを超える標高の高い山が9座あり、森林限界を迎えている山頂からは360°の展望が楽しめます。
山頂からの眺めが特におすすめなのは九州本土最高峰の中岳や日本百名山の著者である深田久弥に九重一族の長と称された久住山(標高1,787m)、山頂に立つとまるで空を飛んでいるかのような気分を味わえる大船山(標高1,786m)です。
初夏の山肌に咲くミヤマキリシマの群生
ミヤマキリシマは九州の高山に生息するツツジの一種です。5月中旬から6月中旬にかけて開花します。九重山は九州の中でもミヤマキリシマの群落が美しいことで有名です。九重山の中でも平治岳や大船山は、最盛期に山がピンク色に染まるほどきれいに咲き誇るミヤマキリシマを見られるでしょう。
燃えるように色づく秋の紅葉シーズン
九重山の麓は広葉樹の樹林帯におおわれていて、秋には見事な紅葉が楽しめます。九重山の紅葉のシーズンは、10月下旬から11月中旬で多くの登山客が訪れます。この時期は木々が赤や黄色に色づき、山肌が鮮やかな紅葉につつまれるでしょう。紅葉で彩られた樹林帯を抜けて山頂をめざす登山は、春や夏に訪れるときとは別世界です。
▼九重山の登山コース詳細はこちらから
九州の日本百名山|季節の花を楽しめる祖母山
祖母山は大分県豊後大野市と竹田市、宮崎県西臼杵郡高千穂町の間にある山で、山腹の一部は熊本県をまたいでいます。
麓はブナやツガの原生林におおわれ、九州では珍しく国の特別天然記念物であるニホンカモシカが生息していることでも知られています。
九州の日本百名山|祖母山の難易度
祖母山は九州の日本百名山の中で、比較的難易度の高い山です。
登山ルートはしっかり整備されていますが、断崖の多い地形で切り立った絶壁を登りながら山頂をめざさなくてはいけません。頂上付近までかなりの急登が続くコースで、初心者向きというよりは中級者以上向きの山といってよいでしょう。
九州の日本百名山|祖母山の魅力
- 九州の山々が見渡せる大展望
- 季節ごとに咲く美しい草花
- 変化に富んだアスレチックコース
山頂から九州の山々が見渡せる大展望
祖母山の山頂は、阿蘇山や九重山などの九州北部の山々が眺められます。タフな登山道を登った先にあらわれる、東西南北の全てを見渡せる大展望は感無量です。
祖母山の山頂からの眺めは、九州にある山を全て見渡しているのではないかと錯覚してしまうほど遠くまで見渡せます。
登山道に咲く美しい季節の草花
祖母山の麓にある原生林は、植物の宝庫です。祖母山には自然の素晴らしい景観が維持されていて、春にアケボノツツジ、夏にはヤハズアジサイやオオヤマレンゲなどさまざまな美しい花を登山途中に見られます。
祖母山の自然観察は、登山の大きな楽しみの一つです。
断崖絶壁を登る変化に富んだアスレチックコース
祖母山の登山道は、切り立った崖や勾配のきつい坂などがあり難易度が高いです。登山ルートにはロープ場や鎖場、ハシゴなどを越える箇所があり変化に富んでいます。
祖母山では滑落事故なども起きているので、登山の際は細心の注意で挑まなければいけません。
▼祖母山の登山コース詳細はこちらから
九州の日本百名山|火の国熊本のシンボル阿蘇山
熊本県に位置する阿蘇山は、根子岳(標高1,433m)、高岳、中岳(標高1,506m)、烏帽子岳(標高1,337m)、杵島岳(標高1,326m)などの山々の総称です。
阿蘇山は火山活動が活発で、直近では2021年10月に噴火が起こったばかりです。
阿蘇山のカルデラは世界最大級で、東西に17km、南北に25kmに広がっています。
九州の日本百名山|阿蘇山の難易度
阿蘇山は登山道がしっかり整備されていて、初心者にもおすすめできる百名山です。標準コースタイムも中岳の場合は登り約95分、下り約70分で、高岳の場合でも登り約120分、下り約90分で日帰り登山が可能です。
九州の日本百名山|阿蘇山の魅力
- 地球のパワーを感じられる火口丘群
- 阿蘇山の美しい草花
- 整備された登山ルート
地球のパワーを目の前で感じられる火口丘群
阿蘇山はカルデラの中心部に火口丘群が形成され現在の形になりました。
カルデラ内にそびえたつ阿蘇五岳の中でも、中岳は活発な火山活動を続けています。阿蘇山の中でも中岳の火口はもっとも有名で、阿蘇山のイメージといえば中岳の火口を思い浮かべる方も多いでしょう。
阿蘇山に生息する美しい草花
阿蘇山は美しい草花が見られることでも知られています。
春にはハルリンドウやキスミレ、初夏にはミヤマキリシマ、秋にはススキが見頃で、季節ごとに美しい景観を見られます。
整備された登山ルートで初心者でも安心
阿蘇山には多くの登山道がありますが、どれも初心者が登れるルートです。コースタイムも最大約5時間30分で、日帰り登山が可能です。ハイキング感覚でチャレンジできる登山装備の必要がないルートもあり、さまざまな楽しみ方ができる山といえるでしょう。
ただし、火山活動の状況によっては立ち入りができなくなる区域が発生するので、登山の前には必ず情報収集をしてください。
▼阿蘇山の登山コース詳細はこちらから
九州の日本百名山|遠く異国の地まで見渡せる霧島山
霧島山は宮崎県と鹿児島県の間にある火山群の総称です。霧島山は韓国岳や高千穂峰(標高1,574m)、新燃岳(1,421m)、高千穂峰(標高1,573m)などの山々が山塊を形成しています。
霧島山は古代から山岳信仰の山として崇められていて、高千穂峰山頂には天照大神の孫ニニギノミコトが誕生した際に山頂に突き刺したと伝えられる天の逆鉾が残っています。
九州の日本百名山|霧島山の難易度
霧島山の登山道はしっかり整備されている登山道が多く、初心者でも登りやすいコースが多いです。最も標高の高い韓国岳の標準コースタイムは約6時間30分で、初心者が日帰り登山をすることが可能です。
九州の日本百名山|霧島山の魅力
- 遠く韓国まで見渡せるといい伝えのある絶景
- 日本でもっとも高い標高に位置する火口湖
- 登山道沿いに咲く美しい花々
遠くまで見渡せる韓国岳山頂からの絶景
霧島山最高峰、韓国岳(からくにだけ)の名前の由来は、山頂から遠く韓国まで見渡せるという言い伝えからきています。韓国岳山頂からは実際に朝鮮半島を見渡すことはできませんが、九州南部の山々に限らず、九重山や阿蘇山、桜島などを眺められ、遠方まで美しい景色を望めます。
日本一の標高に位置する火口湖の大浪池
霧島山には多くの火口湖があります。その中で日本でもっと標高の高い1,239m地点にあるのが大浪池です。
大浪池は直径約630mで周回コースがあります。大浪池の湖畔では、春には黄色いマンサク、初夏にはピンク色のミヤマキリシマを見ることができます。
季節ごとに咲く美しい花々を鑑賞
霧島山は季節ごとにさまざまな花が咲く草花の宝庫です。マンサクやミヤマキリシマ以外にも、シロモジやツルキジムシロ、ハルリンドウ、イワニガナ、オオカメノキなどさまざまな美しい花が見られます。
▼霧島山の登山コース詳細はこちらから
九州の日本百名山|山頂で潮風を感じられる開聞岳
開聞岳は鹿児島県指宿市にある山です。
薩摩半島の南端に位置しているため、麓の南西側は海に面しています。裾野は長く美しい山容から薩摩富士と呼ばれることがあります。
穏やかなたたずまいの開聞岳ですが、実は活火山で約1200年前の平安時代に大噴火を起こした記録が残っているのです。最近では2000年に火山活動が観測されており、地元では火山が起こることを想定して防災計画が練られている山であることを知っておきましょう。
九州の日本百名山|開聞岳の難易度
開聞岳の難易度は高くありません。他の九州の日本百名山と比べてもっとも初心者向きの山といってよいでしょう。麓の半分を海に囲まれているため、登山口は1つです。開聞岳の登山ルートはらせん状になっていて登山道にアップダウンはありません。
開聞岳は子どもでも登れる難易度の低い山ですが、登山ルートには部分的に岩場などの危険箇所があるため、必ず登山靴をはいて登ってください。
九州の日本百名山|開聞岳の魅力
- オールシーズン登山可能
- 山頂で海風を感じられる
- 子どもも登れる百名山
春夏秋冬1年中登れる山
開聞岳は九州本土の南端にあり温暖な地域にある標高1,000m以下の山なので、初心者が冬でも登山を楽しめます。むしろ、真夏の開聞岳では熱中症に注意しなければいけません。
山頂で海風を感じられるオンリーワンのロケーション
山頂からは遠くに宮之浦岳や霧島山の雄大な風景を眺められ、眼下に桜島や長崎鼻、池田湖を見下ろせます。さらに、海からふき上がる潮風が山頂まで届き、心地よい感覚が味わえます。
山頂で海風を直接感じることのできるロケーションは開聞岳のオンリーワンでしょう。
親子で一緒に登れる百名山
開聞岳は登山道が整備されているため、地元の小学生の遠足などでよく登られている山です。危険箇所が全くないわけではありませんが、小さい子どもと親子で百名山に登ることのできる数少ない山です。
しっかり準備を整えて、無理のない登山計画を立てれば親子で山行を楽しめます。
九州の日本百名山|世界自然遺産の屋久島を登る宮之浦岳
宮之浦岳は鹿児島県屋久島にある山で九州の最高峰です。屋久島はユネスコの世界自然遺産に登録されていて、宮之浦岳はその一部に属しています。
宮之浦岳は奥深い原生林に包まれていて、スタジオジブリが制作した「もののけ姫」のモデルにもなったといわれています。
九州の日本百名山|宮之浦岳の難易度
宮之浦岳は屋久島の原生林をすすむ登山ルートで、際立って危険な箇所はありません。しかし、登山口から山頂までの距離が長いため、2泊3日でプランを立てる登山者が多いです。山小屋とテントのどちらでも宿泊可能です。宮之浦岳登山は宿泊を要するので、中級者以上むきの山です。
雨が多いので、雨具は必ず用意しましょう。
九州の日本百名山|宮之浦岳の魅力
- 樹齢1000年を超える屋久杉
- 地球が丸く見える九州最高峰の眺め
- 屋久島の自然が作り出す天然水
屋久杉など古代の自然が残る島
宮之浦岳の登山ルートには樹齢1000年を超える屋久杉がいくつも生息しています。その中でも、樹齢7000年の縄文杉が登山途中に見られ圧巻です。
また、宮之浦岳の登山道には豊臣秀吉が方広寺大仏殿の造営のために切らせたというウィルソン株が見られ、内部から空を見上げるとハート型に見える場所があります。
九州最高峰から眺める絶景
宮之浦岳山頂は周囲に視界をさえぎるものがなく、全方位素晴らしい景色を楽しめます。山頂からは水平線が見え、地球の丸い形がまざまざと実感できるでしょう。遠くに見える硫黄島から噴煙が吹き出している姿を眺められるかもしれません。
屋久島の大地が濾過する豊富な天然水
屋久島は降水量が多く、宮之浦岳の登山道にはいたるところに飲料用として飲める水場が点在しています。このため、飲み水を大量に持って登山をする必要がなく、その分荷物を軽くして登山ができるのです。
屋久島の自然水は不純物が少ないことで知られています。屋久島の水は超軟水なので、美味しく飲めるでしょう。
九州の日本百名山は自分のレベルにあった山を選びましょう!
九州の百名山は個性的な山が多く、必ず一度は登ってみたい山ばかりです。日帰り登山のできる山が多いのもうれしいですよね。
しっかり計画を立て、準備を整えれば楽しい登山が待っています。
九州の日本百名山に登る際に、この記事がお役に立てれば幸いです。