阿智(あち)セブンサミットは、長野県最南端地区。阿智村(あちむら)周辺に鎮座する、7座の景勝山です(恵那山、大川入山、富士見台高原、蛇峠山、南沢山、高鳥屋山、網掛山)。中央アルプス最南端のエリアにある、阿智セブンサミットです。
万葉集に登場し、紫式部や清少納言も積極的に書き綴るほど、歌の舞台としても知られた阿智村や園原があります。難所と詠われた古道は、初心者から楽しめる、魅力的な登山ルートがあります。
阿智村自慢の名峰7座。四季折々の遠望を存分に堪能できるので、オールシーズン人気です。
標高 | 登山標高差 | 歩行距離 | 難易度 | |
網掛山 | 1133m | 415m / 550m | 8km | AとC |
高鳥屋山 | 1398m | 306m / 800m | 3km / 10km | A |
南沢山 | 1564m | 518m | 9km | A |
蛇峠山 | 1664m | 235m / 486m | 3km / 7km | A |
富士見台 | 1739m | 137m / 709m | 8km / 12km | AとC |
大川入山 | 1908m | 880m / 1000m | 9km / 11km | A / B |
恵那山 | 2192m | 635m / 1030m | 10km / 13km | A / B |
今回は、筆者お気にいりの阿智セブンサミットについて、まとめました。
阿智セブンサミット5つの魅力
多くの観光客と登山者に、古里のように愛されている阿智村。ありとあらゆる魅力あふれる、親しみやすい山里です。ここでは、阿智セブンサミットならではの5つの魅力をお伝えします。
その1: 一生に一度は、スタービレッジ阿智へ!
阿智村は環境省認定の「日本一星空が綺麗な村」に選定。適度な高度で、空気がとても澄んでいます。日本とは思えないほどの星空を体験すると、人生観もかわるかもしれません。
富士見台高原のスキー場「ヘブンスそのはら」のロープウェイを利用した、ナイトツアーが大人気です。大川入山のふもとには日本一の星空を観測した「銀河もみじキャンプ場」。蛇峠山のふもとにも星を観測する「浪合パーク」があります。
街の光が届かないエリアでライトを一斉に消し、満天の星空を観測します。敷く物を持っていき、寝転がってゆったりと星空を満喫できます。例年、大人気でチケットは争奪戦に。
その2:南・中央・北アルプスの遠望を楽しめる登山ルート
パノラマビューで、遠望が美しいです。晴れた日には、中央アルプス、北アルプスや南アルプス、恵那山など、雄大な山々の姿と眼下の街並みを眺めます。阿智セブンサミットの絶景ポイントからの眺めは、登山者の心を豊かにしてくれるはず。
たとえば富士見台高原は、雲海も美しい山として認知度が高いです。秋はロープウェイが早朝から営業しています。雲海に浮かぶ日本アルプスの風景は、太陽の昇りを止めたくなるほど、永遠に見ていたい神々しい光景です。
その3: 【極上】美肌の湯 - 山里のふもとに、昼神温泉
ph9.7の強アルカリ性の泉質。昼神温泉は古い角質をとりのぞき、すべすべお肌に。天然化粧水のような温泉で、美肌効果が高い泉質として知られています。泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物泉で、肌に良く、温まりながらリラックスできます。
無色透明でトロトロ感のある温泉は、日本屈指の「美人の湯」として名高いです。明治中期の大豪雨で湯源がくずれて長く閉鎖した経緯があります。恵那山トンネルの開通と共に復興を遂げ、女性がもっとも行きたいと願う温泉郷のひとつとなりました。
その4:「万葉集」と「戦国時代」の余韻を残す古道ルート
阿智セブンサミットは登山愛好家にとって魅力的なスポットです。小さな村なのに関所跡地があちこちにあります。なんとなく大切な道だったような旧跡を、登山中に発見するでしょう。
- 古代東山道 大和朝廷 / 平安時代 多くの歌人に詠われつづけた街道
- 清内路街道 戦国時代 展望のよい尾根を歩いて山頂へ
網掛山と富士見台高原は「古代東山道」の登山ルート、高鳥屋山と東沢山は「清内路街道」が登山ルートの一部です。ほっこりするたたずまいの仏像が、登山者をやさしく見守り続けています。歌碑を発見することもあるはずです。
その5:縄文時代からの歴史が眠るパワースポット
地元の文化や日本の歴史的なものが、とても多く残されているのに驚くでしょう。地元の祭りや伝統行事、山岳信仰の場所など、地域の特色や歴史に触れることができます。
阿智村の山々は、戦国時代は山城として狼煙を上げていたことも。日本最古の文字、神代文字の文献も残されています。さらにその昔の、縄文時代や古墳時代の石器が、網掛山から出土していたり。重要拠点とされていた形跡を、ふと体験する阿智セブンサミットです。
阿智セブンサミットの紹介
阿智セブンサミットは、お手軽な山歩コースから10km以上の健脚用のコースまであります。歩行距離は往復3kmから10km程度で、どの山も難易度Aや難易度Bのルートがあります。初心者から楽しめ、中級者には余裕がある登山になるでしょう。
リンク先の阿智セブンサミットの紹介ページも、ぜひ、ご覧ください。登山ルートは難易度別で紹介し、ヤマコレのヤマプラにて「標準スピード」で作成(休憩なし)。「山と高原地図」に沿ってますので、初心者用の歩行時間で表記しました。
網掛山|古道東山道
網掛山(網掛山)は標高1133mの歴史ある里山。山の南中腹にある網掛峠は、古代東山道があり、古来より人の往来が盛んな峠でした。山頂の東側には展望台があり、南アルプスや昼神温泉郷を一望できます。四季折々の美しい風景は息をのむほどで、多くの観光客にも大人気のスポットです。
網掛山のふもとにある昼神温泉郷は、日帰り温泉や無料の足湯も利用できるため、登山者にとっても訪れる魅力の一つになるでしょう。花桃の咲く春と紅葉のシーズンは大変人気があります。
- 初級 花桃街道 - 昼神温泉のハイキングコース
- 初級 網掛山周回ルート:定番コース(2時間半 3.7km)
- 中級 殿島ルート:古代東山道縦走(5時間 5.7km)
網掛山は、自然の美しさと温泉の恵みを楽しめる魅力的な場所です。
高鳥屋山|古道清内路街道
高鳥屋山(たかどやさん)は標高1398mの里山。戦国時代には山城が築かれ、「坊主ヶ城」「狼煙台」とも呼ばれていました。山頂付近からはパノラマビューの稜線歩きになり、恵那山や南アルプスを眺み続けます。
登山道の途中では、美しい自然の情緒を次々と体験するでしょう。高鳥屋山は登山していても飽きることがなく、歩行時間が短く感じるはずです。
- 初級 高鳥屋山ルート:定番コース(6時間 10.5km)
- 初級 鳩打峠ピストン:縮小コース(2時間 3.2km)
- 初級 山本大明神ピストン:ファミリー用(3時間 3.1km)
味わいある古道、清内路街道が登山ルートのひとつになっています。
南沢山|富士見台高原へ
南沢山(みなみさわやま)は標高1564mの里山。かつては岐阜県中津川市の「馬籠」への街道として、利用されていた登山道です。富士見台高原から北約5kmに位置し、尾根を辿ってピストンや縦走ができるので、恵那山まで行く健脚者もいます。
南沢山は緑が豊かな美しい里山で、森林の情緒が魅力です。天候や体調に合わせて稜線の絶景地帯を堪能する時間を調整し、自身の体力に合わせて楽しめます。
- 初級 南沢山ピストン:定番コース(4時間 7.0km)
- 初級 萬岳荘ピストン:富士見台高原より尾根歩き(5時間 10.2km)
登山ルートがよく整備されているため、比較的楽に歩ける登山コースです。
蛇峠山|日本一の星空
蛇峠山(じゃとうげやま)は、標高1664mの里山。大川入山の登山口から近く、国道153号線を挟んで南東に位置しています。南方に高い山がないため、晴天には南西100km先の伊勢湾まで望める見晴らしです。山頂付近には、かつて武田信玄が狼煙台に使ったと言われる跡地や、国土地理院の電子基準点、電波塔、雨量計などがあります。
蛇峠山は短時間の登山で、大パノラマの景観を手軽に楽しめます。一度訪れると、素晴らしい景色に魅了され、また訪れたくなることでしょう。
- 初級 蛇峠山ピストンコース:ショートカット(1時間45分 3.5km)
- 初級 蛇峠山ピストンコース:定番コース(3時間45分 7.5km)
絵葉書にしたくなるような、日本アルプスの大パノラマの景観が見どころです。
富士見台高原|ヘブンスそのはら
富士見台(ふじみだい)は、標高1739mで富士見台高原にあります。恵那山、北アルプス、南アルプス、中央アルプスを一望し、さらに日本百名山のうち23座の遠望も。豊かな自然や美しい花々に触れつつ、心をリフレッシュさせる絶好の機会となるでしょう。
特筆すべきは「ヘブンスそのはら」からロープウェイがあり、山へのアクセスが非常に便利な点です。ロープウェイの存在により、ハイキングや登山をよりスムーズに楽しむことができます。初心者向けの散策路も多彩で、見どころも満載。
- 初級 ヘブンスそのはらでハイキング
- 初級 富士見台へピストン:定番コース(3時間半 8.5km)
- 中級 古代東山道と富士見台ピストン:古道歩き(5時間45分 10.5km)
四方八方の景色が圧巻で、どこを見たらよいのか、きっと迷い続けるはずです。
大川入山|赤い羊と白い羊
大川入山(おおかわいりやま)は、標高1908mの山で信州百名山のひとつ。恵那山の稜線上に位置しており、その周辺には信州百名山の一部も広がっています。北アルプス、中央アルプス、南アルプスをはじめ、御嶽山や八ヶ岳など、数々の名峰を眺む展望です。
特筆すべきは、樹林帯を抜けた後の景色。その圧巻の美しさに誰もが魅了されることでしょう。大川入山は戦中戦後に、大規模な伐採が行われた地域でしたが、30年の歳月を経て笹の高原へと変貌を遂げました。
- 初級 治部坂峠ピストン:「抹茶まんじゅう」側(6時間半 9.7km)
- 中級 あららぎ高原スキー場ピストン:森林を楽しむ(7時間 11.2km)
- 中級 絶景三昧の縦走コース:効率的な登山ルート(7時間 10.9km)
「抹茶まんじゅう」「羊の牧場」と親しまれており、心を癒す風景が広がります。
恵那山|日本百名山 / 新・花の百名山
恵那山(えなさん)は、標高2191mの中央アルプスの最南端に位置する山で、日本百名山と新・花の百名山に選定されています。山名の由来は、天照大神の胞衣(えな)がこの地に埋められたという伝説に由来。舟を伏せたような形に見えるため舟覆伏山(ふなふせやま)とも呼ばれていたことがあります。
標高差が約1,000mもあり、急登が続きますが、危険な箇所は少なく、初心者にも挑戦しやすい百名山です。恵那山は植物の宝庫で、新・花の百名山らしく花々が登山道を飾っています。
- 初級 広河原ルート:整備された安心なコース(7時間 11km)
- 中級 神坂峠ルート:展望を楽しむコース(7時間 13km)
- 上級 前宮ルート:急登がつづくコース(14時間 16.7km)
- 中級 黒井沢ルート(災害により2023年は通行止め)
絶景ポイントや季節の花々を登山ルートで存分に楽しむ恵那山です。
阿智セブンサミットのQ&A
Q1.阿智村でおいしい食べ物は何ですか?
有名な特産品は美しい里山で採れる松茸です。とうもろこし(ゴールドラッシュ)もおいしいですし、シイタケやクルミもよく知られています。川の水が綺麗なので、アマゴやイワナもおいしく、蕎麦も名産品です。新鮮な野菜や山菜、きのこ、リンゴと、多種多様な特産品を生産している地域です。
Q2.「ヘブンスそのはら」はどういった施設ですか?
正式名称は「ヘブンスそのはらスノーワールド」と言い、スキー場の施設です。スノーシューがレンタルでき、富士見台高原まで歩くコースもあります。売店やカフェは夏も含めた通年営業で、スキーのオフシーズンは、ハイキングや登山で賑わっている観光スポットです。人気のデートスポットでもあり、年齢を問わず楽しめる施設です。
Q3.初心者でも阿智セブンサミッターになれますか?
まったく問題ありません。ぜひ、チャレンジしてみてはどうでしょう。小学生の遠足で行くような、やさしいルートから開始できます。数年かけて登っても、阿智セブンサミッターの認定をしていただけるので、自分の経験に合った山から順に登頂するとよいはずです。恵那山や大川入山の登山コースは、10km以上なので、慣れてないと大変でしょう。難易度は比較的やさしいので、体力がついたら初心者でも登頂できる山です。
阿智セブンサミット 制覇の認定方法
ヤマップには、百名山の制覇と同じように、阿智セブンサミットも認定ロゴがあるのはごぞんじですか。阿智セブンサミットを制覇すると、本物の認定バッチを阿智村からプレゼント!以下は阿智セブンサミッターの認定方法です。
阿智セブンサミット バッチのもらい方
- 阿智村にある7つの山に登頂
- 各山頂にある「阿智セブンサミット」の指定看板と自身が共に記念撮影
- 認定所「はゝき木館 - 東山道・園原ビジターセンター」に画像を見せる
- 7座の画像を確認し、アチセブンサミッターのバッチを授与
「はゝき木館」 東山道・園原ビジターセンター:認定所の場所
認定場所 | 「はゝき木館」 東山道・園原ビジターセンター |
住所 | 〒395-0304 長野県下伊那郡阿智村智里3604-1 |
TEL | TEL 0265-44-2011 |
営業 | 9:30〜16:30 / 休館:年末年始、火曜日(祝祭日の場合は翌日) |
その他情報
- 7座を登るのに何年かかっても大丈夫
- 提示の仕方は、印刷・携帯やカメラの画像を見せるなどでもOK
- 認定は通年受付
有効期間が決められてないと、気楽に挑戦できて開始しやすいですよね。7座を最終的に登り終えるか、最初は疑心暗鬼かもしれません。阿智セブンサミットの1座を登ったら、念のために記念写真だけは撮っておくとよいでしょう。
♨温泉x阿智セブンサミット|人気の山路スポット
郷土料理がおいしく、阿智セブンサミットへアクセスが便利な温泉旅館があります。武将の隠し湯があったと言い伝えられています。しかし、明治の大豪雨で源泉を失い、温泉地の歴史は幕を閉じました。
阿智セブンサミットの網掛山と富士見台高原の山中を通過する、恵那山トンネルを建設をするためのボイリング作業で、ふたたび温泉が湧き出たのです。昭和のバブル期が昼神温泉の復興を助けました。
ここでは、昼神温泉とこの地区を代表する、5軒の温泉旅館をご紹介します。
湯元ホテル 阿智川|昼神温泉
網掛山のふもとにある温泉旅館。南信州昼神温泉を代表する、歴史ある温泉宿です。ほんの少し高台にあるので、夜になると昼神温泉の情緒豊かな温泉街の灯りを楽しめます。
湯多利の里伊那華|昼神温泉
天然温泉を満喫したいなら、湯多利の里伊那華。庭園風の露天風呂は七泉あり、散策するような気分で次々に温泉を楽しめます。
石苔亭いしだ|昼神温泉
料理がおいしい温泉旅館。夕食は郷土風でありながらも高級感のあるお食事を。身も心もデトックスできそうな、阿智の山旅になりそうですね。
昼神の棲 玄竹|昼神温泉
大正浪漫をイメージした客室。こじんまりとした、おちつく温泉旅館です。露天風呂付の客室は、いつでも自由に天然温泉へ入れます。
ホテル富貴の森|富貴の森温泉
南沢山と高鳥屋山のすぐ北にある温泉ホテル。先代の木材会社社長が、本家の山で温泉を掘りあてました!木曽ヒノキのお風呂で、ヒーリング効果が抜群です。日々の喧騒を忘れたいとき、ホテル富貴の森が一番かもしれません。尚、泉質は昼神温泉とはことなります。
阿智セブンサミットのまとめ
中央アルプス最南端の、阿智セブンサミットをご紹介しました。登山文化と歴史がある長野県らしく、阿智セブンサミットも、日本アルプス屈指の見事な登山ルートです。
阿智セブンサミットの登山ルート開拓者は、名もわからない古代の人々が多数です。平安時代や戦国時代からある古道を、ゆったりと歩いてみてはどうでしょうか。
ひょっとしたら、阿智セブンサミットをきっかけに、古道ファンになるかもしれません。