矢倉岳(やぐらだけ)は、神奈川県足柄市にある標高870mの山で、関東百名山の1つです。箱根山地と丹沢山地の間に広がる足柄山地にあり、金太郎伝説でお馴染みの金時山の北側に位置しています。
初心者から楽しめる日帰り可能な山ですので、親子のファミリーハイキングにもおすすめです。
矢倉岳の基本情報と魅力
矢倉岳は遠くからでもひときわ目立つ、お椀を伏せたような特徴的な姿をしています。昔の人はそれを、足柄峠を見張る櫓(やぐら)の形に似ていると思い、櫓(やぐら)岳と呼んでいたのが山名の由来です。
矢倉岳は足柄山地の中でも独立峰的な山であるため、山頂からは360度の視界が広がり、富士山をはじめ、箱根連山、丹沢山地、相模湾などが一望できます。
そんな矢倉岳への登山は真夏を除いていつでも楽しめますが、最も登山におすすめなのは晩秋から初冬にかけての時期です。すすきの穂が銀の波のように揺れるさまは、矢倉岳登山の見どころの1つといえるでしょう。
山の名前 | 矢倉岳(やぐらだけ) |
標高 | 870m |
都道府県 | 神奈川県 |
エリア | 関東 |
山域 | 足柄山地 |
地図・天気など | 詳細情報 |
魅力その①:山頂からの大展望に酔いしれる
山頂は広々とした草原で、目の前にはどっしりとそびえたつ富士山をはじめ、金時山、明神ヶ岳、小田原の町並みから相模湾に浮かぶ江の島まで、一大パノラマが広がっています。急登に後にとりつく頂上だけに、感動もひとしおです。
魅力その②:足柄古道など歴史に浸れる山行が楽しめる
矢倉岳の登山コースには、地蔵堂、足柄峠、足柄古道など歴史スポットが随所に含まれています。富士山のビューポイントとして有名な足柄峠から続く足柄古道は、日本武尊が東征の折に通った道とされ、奈良時代から平安時代にかけて都と東国を結ぶ官道として整備されました。古代の街道を歩くことで、いにしえの旅人たちに思いを馳せた山行が楽しめます。
魅力その③:山麓に広がる里山の風景に癒される
矢倉岳の麓の矢倉沢集落は、日本の原風景である里山の面影を色濃く残す地域で、秋には「ざる菊」の里として多くの観光客が訪れています。また、懐かしい町並みの随所に史跡があり、歴史を学びながら散策が楽しめます。
矢倉岳の難易度別おすすめ登山コース
矢倉岳へは、東側の矢倉沢から登るルートと、南側の地蔵堂からのルート、そして足柄峠の北、足柄万葉公園から入るルートがあります。
【山頂の絶景に感動】矢倉沢バス停~矢倉沢登山口~矢倉岳~清水越~地蔵堂バス停縦走コース
矢倉岳東側の矢倉沢から登って山頂へ向かい、南側の地蔵堂へと下りる矢倉岳登山のスタンダードコースです。片道1時間半から2時間程度で上り下りできますが、急登、急坂の下り、沢の渡渉もあるので、初心者にはややチャレンジングなコースです。
ルート紹介
矢倉沢バス停→(5分)→矢倉沢登山口→(2時間5分)→矢倉岳→(15分)→清水越→(1時間5分)→地蔵堂バス停
※休憩時間:約1時間10分
必要日数 | 日帰り |
総距離 | 5.6㎞ |
コースタイム | 4時間52分 |
累積標高 | 上り:704m 、下り:543m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
詳細レポート
バス停から矢倉沢の町方面に向かって歩きます。途中、公民館の脇にはトイレもあるので利用しましょう。登山口まではのどかな里山の風景が続きます。
道標に沿って進んでいき、獣除けの柵がある登山道に入ります。樹林帯を歩いていき、急登を登りつめると山頂に到着します。
帰りは万葉公園・地蔵堂方面に向かって下っていき、清水越(山伏平)の分岐で万葉公園・足柄峠方向に折れ、次の分岐で地蔵堂方面へ進みます。沢を渡り地蔵堂に到着したら、名物「万葉うどん」のおいしい手打ちうどんをいただきましょう。
駐車場
このコースの登山口付近に駐車場はありません。下山口の地蔵堂には駐車場があります。駐車場詳細は、地蔵堂コースをご覧ください。
【足柄古道を歩く】地蔵堂バス停~清水越~矢倉岳周回コース
矢倉岳の南側、地蔵堂からスタートして矢倉岳に登り、清水越を経て足柄万葉公園から足柄峠へと進み、足柄古道を通って地蔵堂に戻る周回コース。スタートの地蔵堂から矢倉岳までは、先に紹介したコースの下山道を逆に登っていきます。足柄峠から地蔵堂までは、一部、石畳の足柄古道を歩くので、古代の旅人の思いに浸れます。
ルート紹介
地蔵堂バス停→(1時間35分)→清水越→(25分)→矢倉岳→(15分)→清水越→(1時間10分)→足柄万葉公園→(1分)→万葉公園バス停→(10分)→足柄峠→(1分)→足柄峠バス停→(50分)→地蔵堂バス停
※休憩時間:約1時間20分
必要日数 | 日帰り |
総距離 | 8.4㎞ |
コースタイム | 5時間38分 |
累積標高 | 上り:709m 、下り:714m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
詳細レポート
地蔵堂から沢を渡り、グングン登っていきます。矢倉岳山頂からは清水越を経て足柄峠方向へ向かいます。2019年の台風の影響で旧ルートが崩落しています。尾根伝いの新ルートを通行しましょう。
足柄万葉公園は万葉集の歌碑がある公園。相模湾の眺めが美しい富士山のビュースポットです。
ここから車道へ出て、静岡県側の足柄峠へ。
足柄峠から少し戻って足柄古道へ入り、石畳の道を歩いて地蔵堂へと下山します。
駐車場
地蔵堂駐車場を利用します。地蔵堂のすぐ前がバス停で、立派なトイレや手打ちうどんで有名な万葉うどん、茶屋などがあります。矢倉岳のほか金時山、夕日の滝などの拠点にもなっているため、週末は早い時間に満車になります。
- 収容台数:30台
- 料金:無料
- 時間:24時間
- 標高:410m
- トイレ:あり
- 登山ポスト:なし
- 自販機:あり
【富士山が美しい】万葉公園バス停~清水越~矢倉岳往復コース
足柄峠の北、足柄万葉公園からスタートして戻ってくる往復コース。富士山の眺望がすばらしいコースです。
ルート紹介
足柄万葉公園→(1時間5分)→清水越→(20分)→矢倉岳→(15分)→清水越→(1時間)→足柄万葉公園
※休憩時間:約40分
必要日数 | 日帰り |
総距離 | 6.2㎞ |
コースタイム | 3時間32分 |
累積標高 | 上り:478m 、下り:478m |
難易度 | ★☆☆☆☆ |
詳細レポート
足柄万葉公園には、万葉集に詠まれた足柄道に関する歌碑があり、隣接する希望の丘からは富士山や相模湾が望めます。尾根伝いに新ルートを歩いていき、清水越を経て矢倉岳山頂へ向かいます。
帰りはそのまま歩いてきた道を戻ります。
駐車場
足柄峠の東、足柄万葉公園の駐車スペースを利用します。トイレなどの設備はありません。約500m離れた足柄峠近くのトイレを利用するか、車で10分の地蔵堂のトイレを利用します。
- 収容台数:10台
- 料金:無料
- 時間:規定なし
- 標高:740m
- トイレ:なし
- 登山ポスト:なし
- 自販機:なし
矢倉岳のQ&A
矢倉岳で多い質問は、ヤマビル、通行止め、新ルートなどです。回答と併せて紹介します。
Q1: 矢倉岳にヤマビルはいる?
神奈川県におけるヤマビル頻発地帯は、東丹沢の山々です。西丹沢より西部はヤマビルがいないといわれているので、矢倉岳はヤマビルの心配をしなくてもいいようです。しかし6月の雨の中、矢倉岳を含む縦走コースでヒルに遭遇したとの報告があるので、気になる方は念のためヤマビル忌避剤を携行するといいでしょう。
Q2:矢倉岳の登山コースに通行止めはある?
2023年7月現在、矢倉岳ハイキングコースは全区間通行可能です。ただし、足柄万葉公園~山伏平(清水越)の旧ルートは、2019年台風の影響で登山道の一部が崩落し、通行止めになっています。
Q3: 矢倉岳の新ルートは?
Q2の回答で述べた通り、足柄万葉公園~山伏平(清水越)の旧ルートは通行止めのため、代わりに尾根伝いの新ルートが設置されています。登山道にピンクのリボンが巻かれ、「足柄峠・万葉公園 尾根道」と書かれた標識があります。
登山口へのアクセス・各種情報
矢倉岳の東側、矢倉沢本村登山口と、南側の地藏寺登山口、そして足柄峠方向の足柄万葉公園登山口を紹介します。
矢倉沢本村(ほんむら)登山口
矢倉沢バス停から矢倉沢本村(ほんむら)の集落を通って登山口に入り、矢倉岳から地蔵堂へと下りるコースです。このコースの登山口には駐車場がないのでアクセスはバスのみとなります。
バスでのアクセス
小田急線新松田駅から箱根登山バス・地藏堂行きに乗り、矢倉沢バス停下車。所要時間は約30分です。
またはJR小田原駅から伊豆箱根鉄道の大雄山線に乗り、大雄山駅下車。大雄山駅すぐそばの箱根登山バス・関本バス停から地藏堂行きのバスに乗り矢倉沢バス停下車。所要時間は約10分です。
矢倉沢バス停を降りたらバス停横の交差点を渡って右に進み、矢倉沢本村に入ります。矢倉沢公民館の前を通って左のわき道に入り、道標に沿って神社の横を歩いていきます。道標に沿って歩いていくと農道のような坂道になり、茶畑が広がっています。間もなく柵のあるゲートへ。柵を開けて中へ入り柵を閉めて進んでください。バス停からゲートまで徒歩約35分です。
登山口には何の設備もありませんが、途中の公民館そばにトイレがあります。
地蔵堂登山口
地蔵堂から矢倉岳へ登り、足柄万葉公園、足柄峠、足柄古道を通って地藏堂へと下る周回コースの起点となる登山口で、バスでもマイカーでも簡単にアクセスできます。
地蔵堂は矢倉岳だけでなく、金時山や夕日の滝散策の拠点にもなるため、周辺にはトイレ、水場(靴の汚れが落とせます!)、駐車場はもちろん、有名な万葉うどんや茶屋、自販機などもあって設備が整っています。
矢倉岳への登山口は、万葉うどんのすぐそばにあります。
マイカーでのアクセス
地蔵堂駐車場へは東名高速大井松田ICから約40㎞、県道78号線沿いにあります。所要時間は約45分。「金太郎のふるさと」という看板が目印です。
バスでのアクセス
小田急線新松田駅から箱根登山バス・地蔵堂行きに乗り、終点の地蔵堂バス停下車。所要時間は約37分です。
足柄万葉公園登山口
足柄万葉公園へはマイカーでもバスでもアクセスできますが、バスは土日限定運行で本数も少ないため、マイカーのほうが無難です。
マイカーでのアクセス
東名高速大井松田ICから神奈川県道78号線を南足柄・松田方面に直進、竜福寺交差点を標識に従い足柄街道へ右折して道なりに進みます。連続するヘアピンカーブを登り切るとバス停があり、駐車場はバス停奥にあります。駐車場までは大井松田ICから約36㎞、所要時間は約40分です。
登山口は、県道をヘアピンカーブまで戻ったところにあります。また足柄万葉公園内に案内板があるので、確認してハイキングコースに入ってください。
バスでのアクセス
JR小田原駅から伊豆箱根鉄道大雄山線で終点の大雄山駅下車。もしくは小田急線新松田駅から箱根登山バス・関本行きに乗って終点の関本下車。関本(大雄山駅前)から箱根登山バス・足柄万葉公園方面に乗り、足柄万葉公園下車。関本からのバス所要時間は約31分です。
関本から足柄万葉公園へのバスは土日限定で、次の3本しかありませんので乗り遅れないように注意してください。
- 8:40発
- 10:40発
- 13:25発
足柄万葉公園バス停から登山口までは、足柄万葉公園内の案内板を見て、県道をヘアピンカーブまで戻ってください。
矢倉岳周辺のおすすめ山旅スポット
矢倉岳があるエリアには、下山後に立ち寄るのにおすすめのスポットがあります。
足柄古道 万葉うどん
地蔵堂そばの手打ちうどんが有名なお店。注文を受けてから打ち始めるので、のど越しの良さとつるつるの食感が楽しめます。
大雄山 最乗寺
福井県の永平寺に次ぐ、曹洞宗全国第2位の由緒あるお寺。創建した僧侶、道了が天狗となって山中に身を隠したという言い伝えから道了尊と呼ばれ、多くの下駄が奉納されています。うっそうとした杉の古木に囲まれた境内は霊気に満ち、パワースポットとなっています。
夕日の滝
金太郎が産湯を使ったという伝説がある、落差23m、幅5mの滝です。毎年7月第1日曜日には、登山やキャンプの安全祈願のための「夕日の滝びらき」が行われます。