巨大な船のような風貌がトレードマークの荒船山。日本二百名山・関東百名山・ぐんま百名山・信州百名山・日本百低山・新日本百名山と数々の名山に名を連ねています。神秘的な山容に「登ってみたい」と思うものの、切り立った険しい崖や転落事故のニュースから「勇気がでない」という方もいるのではないでしょうか。本記事では初心者でも挑戦できるコースから、上級者がスリルを楽しめるコースまで難易度別に紹介。荒船山の魅力やアクセス方法、周辺のおすすめスポットまで詳しく解説します。荒船山に興味がある方はぜひ最後までご覧ください。
荒船山の基本情報と3つの魅力
荒船山は群馬県甘楽郡下仁田町と長野県佐久市の境にまたがる標高1,422mの山です。妙義山などに代表される周囲の険しい山々を荒波に見立て、平坦な頂上部の山容が軍艦を思わせることからその名が付いたと言われています。
荒船山は古来より信仰が深い山として栄えてきました。荒船山は山の上がほぼ平らなのにも関わらず水が湧き出しています。麓の村が日照りで水不足になっても荒船山の湧き水は枯れなかったという伝説から、「水をつかさどる山」としてあがめられたとのこと。
また、荒船山は古くから「霊山」として修験者の修行の場となっており、中腹にある「鋏岩修験道場跡」はその名残です。荒船山は特徴的な山容だけでなく、歴史も感じられる山となっています。
山の名前 | 荒船山(あらふねやま) |
都道府県 | 群馬県甘楽郡下仁田町 長野県佐久市 |
標高 | 1,422m |
天気・アクセスなど | 詳細情報 |
魅力その①:荒船山のシンボル!艫岩(ともいわ)
荒船山の魅力と言えば、まずは「艫岩」。日本では珍しい、テーブルマウンテン型の平坦な山頂と切り立った崖が特徴です。
巨大な船を思わせる形をしている平坦部分は、南北に約2㎞、東西に約400mと壮大に広がっています。眺望が非常に優れており、群馬県の名山・浅間山や天候が良ければ北アルプスまで見渡せることも。
一方で、断崖絶壁になっているため過去に死亡事故も起こっています。展望台は柵が設置されていないので、転落に注意してください。また、展望台から外れて崖に迷い込むと滑落のおそれもあります。危険な行為はやめましょう。
魅力その②:思わず息をのむ!荒船山は紅葉の名所
荒船山の魅力2つ目は紅葉です。遠くから見ると艫岩がまるで赤い海を旅しているかのよう。断崖絶壁の艫岩と紅葉のコントラストが美しく山を彩っています。見頃は例年10月中旬~11月上旬です。
また、登山道も赤や黄色に葉を染めた木々で囲まれています。紅葉を楽しみながら登頂できるのも嬉しいポイント。特におすすめの紅葉スポットは鋏岩修験道場跡(はさみいわしゅげんどうじょうあと)です。巨大な岩が立ち並んでおり、紅葉とのコラボレーションはまさに絶景ですよ。
魅力その③:いつ行っても楽しい!四季折々の景色
荒船山の魅力3つ目は、四季折々の景観が見られることです。季節によって山の表情が変わるため、違った景色を楽しめます。特に有名なのは艫岩から山頂までの間にあるクリンソウの群生地。花が咲く時期には一面がピンク色になり、とても美しいです。
荒船山で楽しめる四季はこちら。
春(3~5月) | 美しい新緑が広がり、気持ちの良い登山道。 4月ごろは色とりどりの花に出会える。 |
夏(6~8月) | クリンソウの群生地が満開に。例年6月が見ごろ。 |
秋(9~11月) | 巨岩と紅葉のコントラストが絶景。見頃は例年10月中旬~11月上旬。 |
冬(12~2月) | 厳冬期には50㎝以上の雪が積もることも。美しい氷瀑が見られる。 |
前章で紅葉時期をおすすめしましたが、荒船山は秋以外にもたくさんの魅力があるのです。
荒船山の難易度別おすすめ登山コース
荒船山は基本的に登山道の整備が行き届いた山です。しかし、ルートによっては急斜面や鎖を用いた岩場があることも。ここからは難易度別におすすめのコースを紹介します。自身の実力に応じてコース選択の参考にしてください。
【初心者向け】初心者でも怖くない!荒船山登山口コース
①荒船不動尊下駐車場→10分→②荒船不動尊登山口→40分→③星尾峠→55分→④艫岩→35分→⑤荒船山→15分→⑥星尾峠→30分→⑦荒船不動尊登山口→10分→⑧荒船不動尊下駐車場
必要日数 | 日帰り |
コースタイム(休憩を含まない) | 3時間15分 |
距離 | 7.1㎞ |
累積標高 | のぼり:562m くだり:564m |
荒船不動尊登山口コースは初心者の方でも安心して登頂できるコースです。他のコースに比べて難所がなく、スムーズにのぼれます。基本的には平坦な道が続きますが、③星尾峠の先は比較的急です。落ち葉が地面を覆う時期は滑りやすいので気を付けましょう。
また、荒船不動尊登山口コースは名所・艫岩にもしっかり立ち寄れます。難易度は低いものの絶景をおがめるので、高い満足感を得られるでしょう。
ちなみに、山頂は木が生い茂っているため眺望が良いとは言えません。景色は艫岩からのほうが楽しめます。艫岩には山岳方位盤があるので、周囲の山を探すのも面白いですね。
【中級者以上】荒船山人気No.1ルート!内山峠登山口コース
①内山峠登山口→35分→②鋏岩修験道場跡→35分→③艫岩→35分→④荒船山→25分→⑤艫岩→30分→⑥鋏岩修験道場跡→35分→⑦内山峠登山口
必要日数 | 日帰り |
コースタイム(休憩を含まない) | 3時間15分 |
距離 | 10.1㎞ |
累積標高 | のぼり:787m くだり:790m |
内山峠登山口コースは荒船山の名所を巡る、人気の高いコースです。序盤は切り立った崖からは想像できないくらい平坦な道が続きます。しかし、だんだんと急になり、はしごをのぼったり時には滑落しそうな勾配をくだったりする箇所も。雨の後は足場が悪くなるので注意してください。
このコースで巡れる荒船山の名所はこちら。
鋏岩修験場跡 | 標高1,080m地点にある、古の修験道場跡地。 巨大な岩から修行の厳しさを感じられる。 背後の絶壁は地層の縦模様が観察可能。 |
一杯水 | 鋏岩修験場跡の先にある湧き水スポット。 かつては雨乞いの際に神水として使用されており、冬は氷瀑になる。 ※湧き水は人間が立てる位置から離れているため汲むのは危険。 |
皇朝最古修武之地の石碑 | 太古は神々の戦場であったことを伝える石碑。 言い伝えによると神々の戦のあとは千曲川が真っ赤に染まったとのこと。 |
荒船不動尊登山口コースと比べて難易度が高いです。初心者で内山峠登山口コースを登りたい場合は慎重に検討してください。
【上級者向け】スリルを楽しむ!立岩周回コース
①立岩登山口→2時間→②星尾峠→20分→③荒船山→1時間40分→④立岩→1時間40分→⑤立岩登山口
必要日数 | 日帰り |
コースタイム(休憩を含まない) | 5時間40分 |
距離 | 10.1㎞ |
標高差 | のぼり:787m くだり:790m |
立岩コースは初心者が気軽に挑戦してはいけない、難所が複数ある上級者向けのコースです。立岩登山口から山頂までは難なくのぼれますが、山頂から立岩までが難所の連続。ほぼ垂直の鎖場や両側が切れ落ちた細い尾根道があり、滑落の危険性があります。
しかし、「スリルを味わいたい」という方にはうってつけ。上級者の方でも油断せずに、万全の装備を整えて行きましょう。
登山口へのアクセス・各種情報
ここからは荒船山へのアクセス方法やトイレ等の情報を登山口ごとに紹介します。
荒船山は基本的に車でしかアクセスできません。最寄り駅は下仁田駅ですがバスの運行がないため、公共交通機関の場合はタクシーを利用することになります。登山だけでなく観光も楽しみたい方は、レンタカーの利用もおすすめです。
荒船不動尊登山口のアクセス情報
荒船不動尊登山口に車でアクセスする場合の駐車場情報は以下のとおりです。
駐車場 | 荒船不動下駐車場 |
料金 | 無料 |
駐車可能台数 | 10台ほど |
最寄りIC | 上信越自動車道・下仁田ICより約45分 |
駐車場までの道のりが狭いため、運転には十分ご注意ください。
駐車場や登山口付近にトイレはありませんが、荒船不動尊のトイレが解放されています。周囲に自動販売機やコンビニはないため、飲み物等は事前に準備が必要です。
内山峠登山口のアクセス情報
内山峠登山口に車でアクセスする場合の駐車場情報は以下のとおりです。
駐車場 | 荒船山駐車場 |
料金 | 無料 |
駐車可能台数 | 15台ほど |
最寄りIC | 上信越自動車道・下仁田ICより約40分 |
駐車場に簡易トイレがあるので入山前に利用可能。周囲に自動販売機やコンビニはないため、飲み物等は事前に準備が必要です。
荒船不動尊登山口・内山峠登山口 トイレ情報
下仁田ICを降りてすぐに「道の駅しもにた」があります。経路の途中にあるため、立ち寄りやすい公衆トイレです。
荒船不動尊登山口まで約40分、内山峠登山口まで約45分と遠いですが、綺麗なトイレを希望する場合は道の駅下仁田の利用をおすすめします。
立岩登山口のアクセス情報
立岩登山口に車でアクセスする場合の駐車場情報は以下のとおりです。
駐車場 | 立岩登山口駐車場 |
料金 | 無料 |
駐車可能台数 | 10台ほど |
最寄りIC | 上信越自動車道・下仁田ICより約35分 |
駐車場および登山口付近にトイレはありません。周囲に自動販売機やコンビニもないため、飲み物等は事前に準備が必要です。
立岩登山口トイレ情報
下仁田ICから立岩登山口までに立ち寄れるトイレは2ヵ所あります。
①諏訪神社裏公衆トイレ
立岩登山口から約1.5㎞くだったところにある、登山口に最も近い公衆トイレです。
②道の駅オアシスなんもく
下仁田ICから立岩登山口までの経路にある道の駅で、登山口からは車で20分ほどの位置にあります。綺麗なトイレや自動販売機を利用したい場合は道の駅オアシスなんもくが便利です。
荒船山Q&A
Q1:荒船山にテント場はありますか?
荒船山にテント場はありません。
Q2:荒船山の山頂にトイレはありますか?
山頂にトイレはありません。
以前は艫岩にある避難小屋裏のトイレがありましたが、現在は使用禁止になっています。
Q3:荒船山に危険な生き物はいますか?
稀に熊が出没することがあります。
目撃情報等の詳細は群馬県のホームページをご覧ください。
荒船山の周辺おすすめスポット
荒船山の周辺には魅力的な場所がたくさん。ここからは、下山後に立ち寄りたいおすすめスポットを紹介します。
世界遺産・荒船風穴
1つ目の荒船山周辺おすすめスポットは、世界遺産に登録されている「荒船風穴」です。荒船風穴は天然の冷風を利用した蚕の卵の貯蔵施設で、明治から昭和初期にかけて全国一の収容量をほこりました。
江戸時代まで蚕は気候に合わせて年に1度しか飼育ができませんでしたが、風穴を利用することで人工的に蚕の卵を保存することに成功。孵化する時期をずらすことで明治時代半ばには年に数回蚕の飼育が可能になりました。これにより作業効率が向上し、日本の近代化促進に一役買ったのです。
荒船風穴は現在も当時と変わらぬ冷風環境が維持されているため、夏でも涼を感じられます。風穴には解説員が駐在しているので、説明を聞くのも一興ですよ。
見学時間 | 9時30分~16時 ※最終受付15時30分 |
見学期間 | 12月~3月の厳冬期は閉鎖 |
見学料金 | 大人:500円 高校生以下:無料 |
公式ホームページ | https://www.town.shimonita.lg.jp/fuketsu/m01/01.html |
伝統文化体験の宿 つたや
2つ目の荒船山周辺おすすめスポットは、「伝統文化体験の宿つたや」です。つたやは長野県佐久市の伝統文化が体験できる、宿泊施設になっています。
つたやで体験できることはこちら。
- 愛染体験
- 機織り体験
- 岩魚の塩焼きづくり
- 薪割り
- かまどごはん体験
築110年の呉服屋をリノベーションした建物は、囲炉裏やかまどなど当時の風情が残されています。つたやは宿泊施設ですが、場合によっては体験のみも可能とのこと。詳細は公式ホームページよりお問い合わせください。
便利な機器に頼る生活になった現代であえて不便さを体験し、古き良き日本の伝統を感じてみてはいかがですか。
伝統文化体験の宿つたや公式ホームページ:https://uchiyamatsutaya.com/infomation.html
登山のあとはやっぱり温泉
3つ目の荒船山周辺おすすめスポットは温泉です。登山のあとは温泉に入って汗を流したい方も多いのではないでしょうか。
登山口ごとに近い温泉施設を紹介します。
下仁田 荒船の湯
荒船不動尊登山口および内山峠登山口から近い温泉施設は「荒船の湯」です。どちらの登山口からも車で約20分。駐車場から下仁田ICまでの間にあるので立ち寄りやすいです。
荒船の湯の特徴はお風呂の種類が豊富なこと。
- 内風呂
- 露天風呂
- 打たせ湯
- つぼ湯
- 寝湯
汗を流せるだけでも気持ち良いですが、たくさんのお風呂があると楽しんで浸かれますね。食事処もあり、旬の季節には下仁田名物「下仁田ネギ」を使用した料理が食べられます。
登山のあとに美味しい食事と快適なお風呂で体を労わりましょう。
営業時間 | 平日:10時~20時 土日祝日:10時~21時 ※最終入館30分前 |
入浴料金(平日) | 大人(中学生以上):800円 子ども:400円 70歳以上:700円 |
入浴料金(土日祝日) | 大人(中学生以上):900円 子ども:450円 70歳以上:800円 |
公式ホームページ | https://arafunenoyu.com/ |
星尾温泉 木の葉石の湯
立岩登山口から近い温泉は「星尾温泉木の葉石の湯」です。木の葉石の湯は築200年の古民家をボランティア集団が再生させ、薪ボイラーで源泉を沸かすこだわりの湯です。
神経痛や筋肉痛、疲労回復などに効能があり、登山後の疲れた体にぴったり。お風呂以外にも囲炉裏の間の休憩室があり、まるでタイムスリップしたかのような空間が味わえます。
秘境の日帰り温泉でゆったりとした時間を過ごす、贅沢な体験ができますよ。
※地元の野菜や山菜を使った料理がいただけるレストランは2023年7月現在休業中とのこと。食事を考えている方は注意してください。
営業日 | 金曜日・土曜日・日曜日・祝日 ※併設レストランは休業中 |
営業時間 | 11時~18時 ※最終受付17時30分 |
入浴料金 | 大人(中学生以上):1000円 子ども:500円 |
公式ホームページ | https://hoshio-onsen.nanmokushoko.com/ |