京ヶ倉(きょうがくら)は、長野県生坂村にある信州ふるさと120山に選ばれている里山です。
生坂村の村誌に「刃こぼれした巨大なのこぎりのような奇妙な山容」と表現されている通り、険しい岩山であり、標高のわりに高く雄大に見える生坂村を代表する山です。山頂や登山道の途中からは、谷向こうに聳え立つ北アルプスの山々が迫りくる壁のように見える絶景が広がっている、眺望抜群の山でもありあます。
戦国時代には、山城が築かれた古戦場でもあります。地元の一族が武田信玄との戦いに備えたり、松本城で有名な小笠原氏が攻め込む際の戦略道路でもあったなど、歴史の深い山でいくつもの史跡が残っています。
この記事では、京ヶ倉の基本情報や魅力、登山コースごとの特徴などを紹介しています。京ヶ倉登山を計画している方や、生坂村周辺の観光に興味がある方はぜひ参考にしてみて下さい。
京ヶ倉の基本情報と魅力
長野県の中心地方、安曇野市の北にある生坂村に聳え立つ標高990mの里山です。登山道からの展望が素晴らしく、目の前に聳え立つ北アルプスの山々を眺めるための展望台とも言えるほどの絶景が広がっています。
標高は1,000mにも満たないほどの低山ですが、その山容からも分かるように険しい岩山です。そのため、岩場や鎖場、馬の背などの部分があり、標高のわりに登山らしい登山を楽しむことができます。また、その荒々しい山容とは裏腹に、ヒカゲツツジの群生地があるなど山のお花を楽しめる山としても有名です。
京ヶ倉は1年中登ることが可能ですが、冬には積雪地帯であるため十分な装備と経験が必要です。おすすめの時期は初夏と秋で、残雪の北アルプスや紅葉の北アルプスを眺める景色は、ここでしか見られない絶景です。
山の名前 | 京ヶ倉(きょうがくら) |
---|---|
標高 | 990m |
エリア | 甲信越 |
詳細情報 | 京ヶ倉の地図・天気 |
魅力その①北アルプスを一望する絶景
京ヶ倉は、安曇野平を挟んで北アルプスと相対する形でそびえているため、北アルプスを眺める展望台かのような眺望が広がっています。多くの山から見ることのできる北アルプスですが、ここ京ヶ倉からの眺めは素晴らしく、長野県内でも有数の鑑賞スポットです。
特におすすめなのは、ゴールデンウィーク前後に見られる残雪期です。ふもとの生坂村や京ヶ倉などの低山には新緑が芽生え、高く聳える北アルプスに残る残雪とのコントラストが非常に美しいです。
秋の紅葉シーズンもまた、季節の移ろいを感じる絶景が広がるためおすすめです。京ヶ倉自体が紅葉に包まれている時、ふもとには緑が残る犀川の景色が広がり、早い年には北アルプスは初冠雪を迎えています。
いつ登っても、その時々で異なる表情を見せてくれる京ヶ倉からの景色は、登山をするものであれば一度は見るべき絶景が広がっています。
魅力その②戦国時代を感じる城跡
京ヶ倉は、古くは戦国時代に生坂村周辺を治めていた丸山氏が、山上に城を築き、戦いに備えたと伝えられています。松本から長野へ向かう主要道上において、眼下に流れる犀川と生坂村全体を懐に抱え込むように眺められる京ヶ倉は、天然の強固な要塞になっていたのでしょう。
今でもその名残はいたるところに点在しており、京ヶ倉山頂は見張り台や烽火台として、隣の大城に主郭を築き、その周辺には二の郭や三の郭の跡が残っています。
また、松本平を治める小笠原氏は、麻績城を攻める際には、京ヶ倉~大城~はぎの尾峠の稜線を主要な戦略道路として使用していたと言われています。このような時代があったと知った上で京ヶ倉登山をすると、戦国時代に思いを馳せながら点在している史跡巡りも面白いでしょう。
魅力その③季節折々の山野草の花々
京ヶ倉を人気な里山にしているのには、もう一つの理由があります。それが、ヒカゲツツジの群生です。
ヒカゲツツジは、その名の通り日蔭でも開花する日本固有のツツジです。花は、黄色がかった白く可憐な見た目をしており、京ヶ倉では4月後半に見ごろを迎えます。
また、眠り峠のイワカガミやコケリンドウなど、様々な山野のお花が咲きますので、勾配のきつい京ヶ倉登山の際には、ゆっくりお花も楽しみながら登るとよいでしょう。
京ヶ倉の難易度別おすすめ登山コース
最短ルートで景色を堪能する【京ヶ倉ピストンコース】
①万平登山口→45分→②おおこば見晴台→20分→③稜線分岐→35分→④京ヶ倉山頂→35分→⑤稜線分岐→15分→⑥おおこば見晴台→30分→⑦万平登山口
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム※ | 3時間00分 |
距離 | 約3.5km |
累積標高 | 約500m |
難易度 | ★☆☆☆☆ |
松本市から長野市へ向かう国道19号線から生坂村方面へ分岐し、山のほうへ登って行った先に京ヶ倉登山の起点となる万平登山口があります。林道の途中には、獣除けのゲートがありますが、自分で開け閉めをして進むことができます。林道の路肩スペースが駐車場になっており、案内板や登山ノートが設置されている無舗装で10台ほど駐車可能なスペースです。
標高約640mの登山口からスタートすると、はじめは樹林帯の緩やかな登山道ですが、進むにつれて傾斜はどんどん急になっていきます。ところどころで垣間見える犀川やヒカゲツツジをはじめとする山の花に癒されながら登っていきます。登山道は、地元の方々によって整備されており、安全に快適に歩くことができます。
1時間ほどすると、標高800mのおおこば見晴らし台に到着します。京ヶ倉を知らべると、よく出てくる「信州のグランドキャニオン」というような写真の景色を見ることができます。眼下に広がる大きく折れ曲がった犀川と、その先に聳え立つ北アルプスの絶景を堪能するためだけに、ここを目的地にしても良いと思うほどに美しい景観です。
急峻な箇所もありますが、20分ほどで稜線に到着します。稜線は細く岩場も出てきますが、慎重に歩けば問題ありません。最大の難所の馬の背は、岩場の細尾根ですが雨などで濡れていて滑りやすい場合でなければ、景色も良いので勇気を出して行って見ると良いでしょう。手前で巻き道に分かれる分岐がありますので、自信のない方はそちらからも進むことができます。
最後は、トド岩を左に回り込みながら急な斜面を設置されたロープを使いながら登っていくと、山頂に到着です。山頂は少し広めの広場のようになっており、ゆっくり休憩することができます。また、見晴らしも良く、常念岳や蝶ヶ岳から北方には蓮華岳や爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳などの北アルプスの山々を眺めることができます。
戦国時代を感じる【京ヶ倉・大城ピストンコース】
①万平登山口→45分→②おおこば見晴台→20分→③稜線分岐→35分→④京ヶ倉山頂→20分→⑤大城山頂→20分→⑥京ヶ倉山頂→35分→⑦稜線分岐→15分→⑧おおこば見晴台→30分→⑨万平登山口
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム※ | 3時間40分 |
距離 | 約4.3km |
累積標高 | 約520m |
難易度 | ★☆☆☆☆ |
京ヶ倉のピストンコースでは、まだ体力に余裕のある方はその先の大城まで行って見ると良いでしょう。この大城は、日岐大城跡とされており、室町時代から戦国期にかけて安曇地方を支配していた仁科一族がここに城を築いた跡と言われています
京ヶ倉山頂からは、急な下り坂を注意して下ると、20分ほどの稜線歩きで大城に到着します。本郭や二の郭、段郭に堀切、京ヶ倉山頂は見張り台など、当時の名残が至る所に残っており、歴史を感じられるスポットです。
体力に余裕のある方はぜひ!【はぎの尾周回コース】
①万平登山口→45分→②おおこば見晴台→20分→③稜線分岐→35分→④京ヶ倉山頂→20分→⑤大城山頂→20分→⑥物見岩→10分→⑦はぎの尾峠分岐→30分→⑧下生坂→60分→⑨万平登山口
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム※ | 4時間00分 |
距離 | 約8.5km |
累積標高 | 約620m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
大城から先、はぎの尾峠まで行く稜線歩きの周回コースになります。はぎの尾峠から下山後、国道を一時間ほど歩いて万平登山口に戻るルートのため、時間と体力に余裕が必要です。
大城からは、少し歩くと安曇野方面の展望台があります。また、その先には物見岩、筑北展望台があり、すぐ下の犀川や対岸の田畑、その先の安曇野平や北アルプスの景観を眺めることができます。
物見岩から10分ほどで、はぎの尾峠分岐に到着します。多くの案内板が建てられていますが、その中に江戸時代から生活道路として使われており、明治以降には通学路としても使用されていたと書かれています。とても通学路とは思えないような人気の少ない急坂を下ると、ふもとの下生坂地区に下ります。
下生坂地区からは、国道19号を歩きトンネル手前から生坂村方面へ分岐し、万平登山口まで歩けば周回できます。下生坂地区から、徒歩で約5kmを1時間ほどかかります。下生坂地区の登山口は、田んぼ道の曲がり角ですが路肩に数台なら駐車可能ですので、デポして周回するのも良いでしょう。ただし、地元の方の迷惑にならないように注意しましょう。
京ヶ倉を満喫する【眠り峠周回コース】
①万平登山口→45分→②おおこば見晴台→20分→③稜線分岐→35分→④京ヶ倉山頂→20分→⑤大城山頂→20分→⑥物見岩→10分→⑦はぎの尾峠分岐→30分→⑧大城・眠り峠分岐→10分→⑨眠り峠→40分→⑩下生坂→60分→⑪万平登山口
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム※ | 4時間50分 |
距離 | 約10.8km |
累積標高 | 約710m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
はぎの尾峠よりさらに北まで稜線を進むコースです。はぎの尾から眠り峠まで、歩く人は少ないため落ち着いた雰囲気の林で人気が少なくなります。15分ほど歩くと「グレースの森記念林」という小広場に到着します。あずまやや簡易トイレがあり、休憩適地になっています。
そのまま下っていくと、眠り峠分岐に到着です。左に下ると下生坂地区に真っすぐ下り、右に登っていくとすぐに眠り峠に出ます。見晴らしは利きませんが、イワカガミが群生しており、ベンチもあるのでここも休憩に適しています。
眠り峠からは、来た道を戻り分岐から下るか、林道をそのまま下ります。下生坂地区まで下ると、林道ゲートをくぐり虚空蔵堂の脇から集落へ出てきます。はぎの尾コースと同様に、万平登山口まで戻って終了です。
京ヶ倉のQA
京ヶ倉に関する質問で多いのは、登山ルートや気温・積雪などに関することです。このような質問について以下QAを紹介します。
京ヶ倉の登山レベルは?初心者でも登れる?
京ヶ倉の登山ルートは、京ヶ倉や大城までのピストンコースであれば、初心者の方でも十分に登ることができます。どちらのコースの標高差も500mほどですので、ゆっくり時間をかけてマイペースに登れば問題ないでしょう。
また、登山道はよく整備されており道迷いの心配はありません。ただし、岩場・鎖場は途中に出てきますので初心者の方や登山デビューの方は注意して登りましょう。山頂では、想像以上の絶景が待っていますので、これから登山を始めようとしている方にもおすすめしたい山の一つです。
京ヶ倉の気温は?どんな服装で行けばいい?
京ヶ倉のある生坂村の月ごとの平均最低気温と最高気温を下記の表にまとめました。冬の最高気温は1桁ですが、夏は30℃を超えてきます。また、同じ月でも最高と最低が10℃以上の差があり、寒暖差の激しい地域です。朝晩の冷え込みにも注意しましょう。
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
最高 | 3.6 | 4.9 | 9.9 | 17.1 | 22.8 | 25.8 | 29.2 | 30.4 | 25.4 | 19.1 | 13.2 | 6.8 |
最低 | -5.5 | -5.4 | -2.1 | 2.8 | 8.5 | 14.1 | 18.8 | 19.5 | 15.5 | 8.8 | 2.0 | -2.7 |
冬期間はしっかり冷え込みますし、積雪のある地域に位置しています。里山とはいえ岩場や鎖場のある急峻な箇所のある山ですので、十分な下調べと装備・経験が必要です。
京ヶ倉で見られる山の花は?見ごろは?
京ヶ倉では春から秋にかけて様々な山野草のお花を見ることができます。下の表に見ごろと一緒にまとめて紹介しますので、参考にしてみてください。
山の花 | 見ごろ | 山の花 | 見ごろ |
---|---|---|---|
コケリンドウ | 3~6月 | ナデシコ | 5,6月 |
ヒカゲツツジ | 4月 | ムラサキヤシオ | 5,6月 |
フデリンドウ | 4月 | イワカガミ | 6,7月 |
ミツバツツジ | 4,5月 | ママコナ | 7~9月 |
イカリソウ | 5月 |
登山口へのアクセス・各種情報
どちらの登山口へも、アクセスは車がおすすめです。ただし、駐車場は広くありませんので、乗り合いなど工夫した方が良いでしょう。
万平登山口
登山口情報
松本市から長野市へ向かう国道19号線の生坂トンネル手前から左に折れて、生坂村市街地へ向かいます。生坂村役場の脇から、斜面を登っていくと万平松並木を通り、ゲートを越えて林道を進んだ先に万平登山口があります。
案内板や登山ノートが設置されている駐車場ですが、林道の路肩スペースなので駐車できるのは10台ほどです。
満車の際や、細い林道の運転に自信のない方は、いくさか総合グラウンド横の駐車場に車を置いて、歩いていくことも可能です。下生坂地区から万平登山口に向かう途中ですので、周回する方も使用を検討しても良いでしょう。
登山口までのアクセス
松本市側から
安曇野ICから車で約25分
長野市側から
麻績ICから車で約30分
下生坂登山口
登山口情報
はぎの尾峠から下ってきた場所にある登山口です。少し北側の林道から、眠り峠へ登ることもできます。
松本市側から国道19号線を進んできて生坂トンネルを越えた先、左手に体育館が見える場所を右手に入っていった田んぼ道の中に登山口はあります。
駐車場はなく、路肩スペースに数台駐車可能です。ただし、地元の方の迷惑にならないように注意しましょう。
登山口までのアクセス
松本市側から
安曇野ICから車で約25分
長野市側から
麻績ICから車で約25分
京ヶ倉周辺のおすすめ山旅スポット
差切峡温泉 坂北荘
生坂村から車で15分ほど、10kmほど離れた筑北村にある日帰り入浴施設です。麻績ICに向かう途中にありますので、長野方面へ行く方は途中で寄る形になります。
温泉は、単純硫黄冷鉱泉で源泉は12.6℃になっています。サウナや水風呂もあり、食事処もあるので、登山後の癒しにはもってこいの施設です。
かついえおやき店
長野県の郷土料理、昔ながらの手作りおやきを販売しているおやき屋さんです。囲炉裏焼きや灰焼きと言われる方法で焼いたおやきは、大きめでボリュームがあり、外はカリッと中はもちもちしておりとても人気があります。
なす、野沢菜、ミックス、あんこ、切り干しの5種類の味があります。人気店のため、予約してから購入に伺うと良いでしょう。
モーフベーカリー
はぎの尾峠や眠り峠の登り口がある下生坂地区にある、天然酵母のパン屋さんです。素材にこだわり、長野県産の食材をふんだんに使った酵母からなるパンは、噛めば噛むほど味わいが深まっていきます。
金曜日と土曜日のみの営業ですが、京ヶ倉周回登山の下山後だけでなく、生坂村を通ることがあればぜひ寄ってみてほしいおすすめのパン屋さんです。