雪山登山といっても標高や登山道の勾配によって必須アイテムが異なります。今回はこれから雪山登山を始めてみようと考えている雪山登山初心者向けに基本装備、行動着を紹介します。まずはじめに雪山装備リストを紹介します。その後基本装備の選び方を紹介して、第2弾の動画でウェアの選び方について紹介をします。
雪山装備リスト
ここで紹介する雪山装備は低山向けとしています。想定している雪山は以下のことを想定しています。
- 登山者が多いこと:ラッセルが少ない、登山道がわかりやすい
- 登攀するような場所がない
- 日帰り登山:宿泊を想定しない(ビバークは想定する)
例えば神奈川県の塔ノ岳(標高1,490m、大倉登山道からの標高差は約1200m)、東京都最高峰の雲取山(標高2,017m、鴨沢バス停からの標高差は約1200m)は、健脚の方であれば日帰りも可能かもしれませんが、これくらいの山は行くことができるような雪山装備リストとしています。
基本装備
- 雪山用登山靴
- ザック
- ヘッドライト
- クッカー
- ガスストーブ
- 燃料
- ツエルト
- ヘルメット
- サングラス
- 日焼け止め
- 魔法瓶&水筒
- 行動食
- 時計
- 地図
- コンパス
- ファーストエイド
- 体温計
- ストック(場所によってはピッケルが必要)
- カラビナ
- スリング
- ロープ
- アイゼン
ウェア
- アンダーウェア
- ベースレイヤー(メリノウールウェア)
- ミドルレイヤー(フリースなど)
- アウター(ハードシェル上下)
- ゲイター
- スパッツ(もしくはサポートタイツ)
- ソックス
- ズボン(必要に応じて)
- グローブ
- ニット帽
- バラクラバ(もしくはフェイスマスク)
- 防寒着
基本装備の選び方
雪山用登山靴
雪山用の登山靴は、保温素材が入っていることで足を保温し、登山靴のねじれを防ぐためのシャンクが内蔵され、アウトソールは固くしっかりしたものを選ぶことで、不安定な場所でも安定して立ちやすく作られています。またアイゼンには大きく三種類の装着方法がありますが、登山靴に「コバ」と呼ばれる溝があることで、ワンタッチ、セミワンタッチと呼ばれるアイゼンを装着することができます。
コバ無しはストラップ、後コバありはセミワンタッチ、前後コバありはワンタッチという選び方です。チェーンスパイクや軽アイゼンで済んでしまうような勾配の少ない山であればコバ無しでも良いのですが、雪山登山をしていると少し高い山に登りたくなることも考えられるので、その時にアイゼンだけを購入するだけで済ますことができるように、コバありタイプの登山靴を購入しておくほうが良いです。
ザック
ザックは低山登山であればわざわざ購入する必要はなく、3シーズンで使用しているザックを活用すると良いと思います。雪山登山は3シーズンの登山と比較すると防寒着などの荷物がかさばるので、僕の場合は25Lのザックをコンプレッションして使用しています。もしもザックを購入しようと考えているのならばピッケルやカラビナ、スリング、ヘルメットなどがザックに外付けできるタイプがおすすめです。
ヘッドライト
冬は日が短くなるのでヘッドライトは非常に重要な装備です。雪山登山は積雪量、ルートファインディング、登山道が凍っているか否かなど、実際に行ってみないとわからないことが多いため計画通りの時間で歩けないことも想定しなければいけないので、暗くなっても行動することができる準備は整えておきましょう。
クッカー&ガスストーブ&燃料&ツエルト
今お話ししたように、もしも暗くなってビバークしなければいけなくなった時に、雪を使ってお湯を作ることができること、明るくなるまでその場に停滞することができる道具が必要です。ツエルトはもしもの時のアイテムとなるのでできるだけ軽量なものがおすすめです。モンベルのU.L.ツェルトは200×80×90cmで275g、ファイントラックのツエルト1は同じサイズで230g。価格はどちらも2万円ちょっとです。ファイントラックの方は結露を少なくするためのコーティングが施されているので、僕はファイントラックのツエルト1を使っています。
ヘルメット
雪山登山では3シーズンとは異なり転倒する可能性が高いためヘルメットを基本装備に含めています。緩やかな登山道が続くような低山登山でも初心者の方はヘルメットを装着するように心がけた方が良いと思っています。ヘルメットは落石も怖いですが、転倒した時に頭を打たないようにと考えるべきだと思っています。
サングラス
雪山では雪面から反射する光で目の疲れを軽減させ、雪目にならないように強い紫外線から目を守るためにサングラスがとても重要です。また雪山は非常に乾燥しており、冷たい風が目に当たり続けると涙が止まらなくなり、最悪の場合目を開けることができなくなり行動できなくなります。だから8カーブあるサングラスや横から風が入ってこないようなガードがついているモデルを選ぶようにしましょう。
日焼け止め
雪は紫外線を約80%反射するので、3シーズンよりも紫外線は2倍以上あると考えておきましょう。さらに1000m登ると紫外線が10〜12%増えるので、日焼け止めの重要度がわかると思います。
魔法瓶&水筒
寒い場所に水を持っていくと水は冷たくなります。この冷たい水を飲むと体が冷えてしまいます。また水は基本的には0度で凍り始めるので、気温によっては水分補給をしようとした時に水が飲めないことも考えられます。だから魔法瓶を持って行って暖かなお湯と水筒を併用することで体を冷やさずに水分補給をすることができます。もしも体が冷えてしまった場合は魔法瓶に入ったお湯を飲んで体を温めることもできます。
また休憩中にお湯を作ることができる場合は、作ったお湯を魔法瓶に追加することを心がけておくと、もしもの時に安心です。
行動食
行動食は雪山登山用に特別なものは持って行きませんが、チョコレート類は硬くなってしまうので羊羹やカロリーメイトなどを行動食に加えるようにしています。
時計
現在地と時間で計画通りに歩けているかのチェックは雪山ではマメに行うようにしています。この時に時計があると素早く対処することができます。時計は標高が見やすいモデルを重視しています。
地図
地図はスマホでジオグラフィカのチェック、昭文社の紙地図の2種類を使っています。昭文社の紙地図は50,000分の1なのでおおよその場所を特定するのに便利ですがルートファインディングをする時には使い物になりません。ジオグラフィカは25,000分の1なので等高線をチェックすることができて、現在地とこれから向かうルートを特定するのに有用です。
コンパス
スマホや時計についているコンパスを使ってこれから進むべき方向を定めることができますが、どちらも電池がなくなってしまっては使い物にならなくなってしまうので、念のためにコンパスを持っていくようにしています。
ファーストエイド&体温計
夏山登山で使用しているファーストエイドキットと体温計を持っていくようにしています。寒気を感じた時に、それが気温によるものなのか?体の不調によるものなのか雪山を歩いているとよくわからなくなります。こんな時に体温計があると正しく熱を測ることができます。
ストック(場所によってはピッケルが必要)
急斜面で手掛かりが必要で、バランスが保ちづらいような登山道を歩く時にはピッケルは必須装備になります。基本的に雪山と呼べるような場所に出かける時にはピッケルがあると安心です。冬の登山=雪山=10本爪以上のアイゼン&ピッケルが必要、ピッケルが必要というように決めつけるのではなく、勾配が少なく簡単に登れる山であればチェーンスパイクとトレッキングポールがあれば十分登れる山もあります。
カラビナ&スリング&ロープ
カラビナやスリング、ロープはどうしても先に行かなければいけないけれども、雪が凍っていたり、道幅が狭くなるなどで危険な場合、滑落を防ぐために必要な道具となります。登攀するような登山では必須装備になります。
アイゼン
雪山登山初心者の方が最初に行く低山であればチェーンアイゼン、軽アイゼンで良いと思います。勾配がきついような登山道では10本、12本爪のアイゼンが必要になります。アイゼンの爪の本数に悩んだら、若干重量は嵩んでしまいますが大は小を兼ねる考え方で爪の多いアイゼンを購入するのが良いと思います。
チェーンスパイクや軽アイゼンを選ぶ時は爪の数よりも爪の大きさをチェックするのが良いです。これは重量にも関係してくるので軽いアイゼンは爪の大きさが小さく数も少ないです。僕はチェーンスパイクならモンベルのチェーンスパイク、軽アイゼンもモンベルのものがおすすめです。