冬山登山の魅力の一つに氷瀑観賞があります。「氷瀑といっても東京や埼玉じゃ見られないでしょ」と思っている方がいるかもしれません。しかし、東京都や埼玉県でも氷の芸術である氷瀑を楽しめる滝があるのです。氷瀑観賞の楽しさを知ることで冬山登山がより楽しいものになるでしょう。そこで今回は、東京都や埼玉県で見られる氷瀑や、氷瀑観賞の際に登山ができる山について紹介します。
※当記事で紹介する登山コースタイムに休憩時間は含まれていません
氷瀑を見に東京都・埼玉県で冬山登山をしよう!
冬山登山というと雪山やアイスクライミングをイメージするかもしれません。しかし、氷瀑観賞も冬山登山の楽しみです。そして、北国でなくても氷瀑を楽しめる滝が東京都や埼玉県にはあります。近年は温暖化による冬の気温上昇の影響で必ずしも氷瀑が見られるわけではありませんが、1〜2月の寒くなる時期には滝が結氷し氷瀑が見られる可能性が高くなるでしょう。なお、冬山登山をするときは登山道の積雪や結氷に対応するために、軽アイゼンやチェーンスパイクを携帯しましょう。積雪の量が多い場合はアイゼンも用意してください。
高さ30m!百尋の滝の雄大さに圧倒!
まずは百尋ノ滝と川苔山への登山について解説していきます。
百尋ノ滝とは
百尋ノ滝(ひゃくひろのたき)は、東京都奥多摩町にある高さ30mの滝です。百尋ノ滝を見に行くには、最寄りの川乗橋バス停から片道だけで約90分かかります。百尋ノ滝まで川沿いの林道や登山道を歩くことを考えると、氷瀑の観賞だけでも登山の装備は欠かせないでしょう。なお、百尋ノ滝の云われは、かなり大きな滝であるとの誇張表現から来ています。百尋ノ滝の「尋」とは、両手を左右に広げた長さの意味で六尺に相当します。一尺が30.3cmで六尺(一尋)が181.8cmなので、百尋では181.8mとなり実際よりもかなり大きくなってしまうのです。つまり、「すごく大きい滝である」と伝えたくて、「百尋ノ滝」と名付けたと考えられています。
百尋ノ滝から川苔山へ
川苔山 | 詳細情報 |
都道府県 | 東京都 |
山系 | 秩父山地 |
エリア | 秩父多摩甲斐国立公園内 |
標高 | 1363m |
山の紹介 | 川苔山の基本情報と山頂付近の天気 |
百尋ノ滝の氷瀑を観賞したら次は川苔山を目指します。百尋ノ滝を通過する全体のコースタイムは6時間15分です。川苔山山頂までは百尋の滝から約2時間の距離なので、百尋の滝の氷瀑観賞を考えているなら、ぜひ川苔山へ登山しましょう。川苔山への登山道は急坂や幅の狭い箇所もあるため注意して登ってください。山頂は広々としていて展望がほぼ全方向に開けていることが特徴です。かつては山頂付近に茶屋がありましたが現在はありません。なお、山名の由来は、海苔に似た淡水産の緑藻がとれる谷が川苔谷と呼ばれていて、そこから川苔山という山名がつけられました。川苔山からの下山ルートは奥多摩駅や鳩ノ巣駅などと様々ですが、赤杭尾根を通って古里駅へ行くルートが展望が開けていておすすめです。
吊り橋から見られる三頭大滝はまさに絶景!
次は三頭大滝と三頭山への登山について解説します。
三頭大滝とは
三頭大滝(みとうおおたき)は「三頭ノ大滝」とも呼ばれていて、南秋川水系でもっとも上流にあり、南秋川で最大の高さ35mの滝です。三頭大滝は東京都檜原村にあり、「滝見橋」という吊り橋から見られます。また、滝と橋という自然美と人工美が一つの写真に納まるので、写真撮影が趣味の登山者にはおすすめの滝と言えます。三頭大滝へのアクセスは、全長1km、片道20分の「東京都檜原都民の森」の中にある「大滝の路」を歩きます。なお、東京都檜原都民の森は、三頭山の中腹に位置する標高約1000mに広がる森で、誰もが楽しめるように散策路や施設などが整備されています。
三頭大滝から三頭山へ
三頭山 | 詳細情報 |
都道府県 | 東京都 |
山系 | 秩父山地 |
エリア | 秩父多摩甲斐国立公園内 |
標高 | 1531m |
山の紹介 | 三頭山の基本情報と山頂付近の天気 |
三頭大滝の氷瀑を観賞したら三頭山へ登山しましょう。三頭大滝を通過する全体のコースタイムは3時間30分です。前述の大滝の路から東京都檜原都民の森の中にある「石山の路」「深山の路」を通って、大沢山へ登り三頭山まで縦走します。下山は鞘口峠を通過する東京都檜原都民の森を周遊するコースです。どの道も歩きやすく整備されていることが特徴です。三頭山は奥多摩三山(三頭山・御前山・大岳山)の最高峰で、山頂は西峰・中央峰・東峰の三峰で形成されています。中央峰と東峰の間に三等三角点があるので、登った方はぜひ見つけてください。また、山頂からは、南に富士山、北に雲取山が見られます。なお、奥多摩湖側の小河内神社バス停からの登山ルートもあります。
払沢の滝は「日本の滝百選」に選ばれている!
払沢の滝と浅間嶺への登山について解説します。
払沢の滝とは
東京都民なら払沢の滝(ほっさわのたき)という名称を一度は聞いたことがあるでしょう。払沢の滝は東京都で唯一「日本の滝百選」に選ばれている滝で、4段で形成され60mの高さを誇ります。三頭大滝と同じ東京都檜原村にあり、観光スポットとしても有名です。払沢の滝の4段のうち、散策路から見られるのは高さ23.3mの最下段の滝です。払沢の滝入り口バス停付近から続く、ウッドチップが敷かれたゆるやかな傾斜の散策路を歩くと払沢の滝にたどり着けます。なお、毎年12〜3月には「払沢の滝冬まつり」が開催され、払沢の滝がもっとも氷結する最初の日を当てる「氷瀑クイズ」や、「フォトコンテスト」があります。夏まつりのようにライトアップはされませんが、氷瀑と化した払沢の滝を思う存分楽しみましょう。
払沢の滝から浅間嶺へ
浅間嶺 | 詳細情報 |
都道府県 | 東京都 |
山系 | 秩父山地 |
エリア | 秩父多摩甲斐国立公園内 |
標高 | 903m |
山の紹介 | 浅間嶺の基本情報と山頂付近の天気 |
払沢の滝から登山道が続いている山はありませんが、近くにある浅間嶺(せんげんみね)への登山について解説します。払沢の滝を通過する全体のコースタイムは5時間45分です。浅間嶺への登山道は緩やかな登り坂で、のんびり登山をしたい方にはおすすめの山です。登山道のいたるところに馬頭観音や石仏が祀られていて、浅間嶺がある浅間尾根が古道であった名残を感じます。また、山頂付近の展望台から富士山や大岳山などの展望が楽しめます。下山ルートは、浅間尾根を西へ行き数馬分岐から浅間尾根登山口バス停へ下るルートです。ただ、浅間尾根登山口バス停から登り始めて下山後に払沢の滝を観賞するほうが、バスの本数を考えるとよいかもしれません。
3段で流れ落ちる不動滝に感動!
ここでは不動滝と大峰への登山について解説します。
不動滝とは
「大除(おおよけ)沢不動滝」とも呼ばれている不動滝は、埼玉県秩父市にある高さ50mの滝です。滝は3段に分かれていて、上段から25m・15m・10mとなっています。見たらきっとその迫力に圧倒されるでしょう。不動滝へは不動滝入口から約30分ほどでつきます。ただ、道は登山道のように整備されていなく、谷を下り、吊り橋を渡り、山を登り、と登山と変わりはないので、不動滝を見に行くだけでもしっかりとした装備が必要です。なお、滝沢ダムの近くに「蛹沢不動滝」があり、不動滝ともさほど離れていないので、間違わないように注意してください。
不動滝からへ大峰へ
大峰 | 詳細情報 |
都道府県 | 埼玉県 |
山系 | 秩父山地 |
エリア | 秩父多摩甲斐国立公園内 |
標高 | 1062m |
山の紹介 | ー |
不動滝から登山道が続いているような山はありませんが、秩父湖を挟んで向かい側にある大峰への登山について解説します。不動滝を通過する全体のコースタイムは6時間20分です。大峰は「大峰ハイキングコース」が整備された山です。川又バス停から登り始めるルートは、大峰登頂後は下り坂が多く登山者にとっては物足りないかもしれません。しかし、急坂や岩場も所々にあるので十分注意して登山するようにしましょう。ルートは秩父湖を右手に大峰から尾根沿いを東へ歩いて大黒山へ縦走し、秩父湖バス停へ下山します。下山では秩父湖の眺望が楽しめます。
※下図には川又バス停・不動滝間のルートは示されていません
76mの巨瀑・丸神の滝!
最後は丸神の滝と両神山への登山について解説します。
丸神の滝とは
丸神の滝は高さ76mで、今回紹介する五つの滝の中でもっとも巨大な滝です。埼玉県内で唯一「日本の滝百選」に選定された丸神の滝は、約1000mの急峻な地形を流れる滝越沢(たきごしざわ)にあります。なんと江戸時代後期の『新編武蔵風土記稿』という歴史的な文献にも掲載されています。丸神の滝の美しさに、現代だけではなく昔の人々も感動したのでしょう。丸神の滝へのアクセスは、「丸神の滝 駐車場」から整備されている約1.5kmの散策路を歩きます。整備はされていますが滑る箇所もあるので、滝を見るだけでもしっかりと登山用の装備をしましょう。
丸神の滝から両神山へ
両神山 | 詳細情報 |
都道府県 | 埼玉都 |
山系 | 秩父山地 |
エリア | 秩父多摩甲斐国立公園内 |
標高 | 1723m |
山の紹介 | 両神山の川苔山の高尾山の基本情報と山頂付近の天気 |
丸神の滝から登山道が続いているような山はありませんが、近くに両神山があるので解説します。丸神の滝を通過する全体のコースタイムは7時間10分です。日本百名山の一つでもある両神山はノコギリ状の山容が特徴です。丸神の滝の近くにある両神山登山道の白井差(しらいさす)新道を登って両神山を目指します。白井差新道の途中にある「昇竜の滝」も見事なので、両神山を登山したときはぜひ観賞してください。白井差新道の大笹沢の所々にある巨岩も魅力の一つです。なお、白井差新道は山中豊彦氏が私有地の中に開いた登山道で、利用する場合は予約と環境整備料1000円が必要です。
※下図には丸神の滝・白井差新道間のルートは示されていません
東京都・埼玉県の氷瀑を見に冬山登山をしよう!
今回は東京都や埼玉県で観賞できる氷瀑と登山を組み合わせて紹介しました。北国ではない東京都や埼玉県ですが、氷瀑を楽しめる滝があります。そして、氷瀑観賞と登山を組み合わせることで、冬山登山がより楽しいものになること間違いなしです。登山道の積雪や凍結にも十分注意して、氷瀑登山を楽しみましょう。