鍬ノ峰(くわのみね)は、長野県大町市にある北アルプスの前衛の里山です。「長野県の名峰百選」に選ばれており、北アルプスの展望台のような圧巻の景色を見るために多くの登山客が訪れる人気の山です。
登降中はあまり眺望が望めませんが、笹原の山頂部からは360度の大パノラマが広がります。特に目の前に広がる北アルプスの景色は、登山好きなら誰もが憧れる山々が一堂に会する絶景です。
また、春先にはシャクナゲやイワウチワが登山道わきに咲き乱れ、可憐な花々を楽しみながらの登山となるでしょう。
この記事では、鍬ノ峰の基本情報や魅力、登山コースごとの特徴などを紹介しています。鍬ノ峰登山を計画している方や、大町市周辺の観光に興味がある方はぜひ参考にしてみて下さい。
鍬ノ峰の基本情報と魅力
鍬ノ峰の標高は1,623mで、餓鬼岳の東側にある北アルプス前衛の山です。大町市街地から見上げると北アルプスの前に立ちはだかる鍬のような山容をしており、「常盤富士」とも呼ばれ地元の人々を中心に里山として親しまれています。
標高1,600m級の里山ではありますが、急登区間が多く、ロープのかけられた岩場や高度感のある箇所もあり、北アルプスらしい登山を楽しめる山です。多くの登山客が訪れる人気の山であり、白沢側の登山道は特によく整備されており、急登ながら登りやすく安心して山行に臨めます。
仏崎観音寺から登るコースは、地元の大町岳陽高校の登山部が2000年に開拓し整備しているコースです。岩場や急登、ロープなどバラエティ豊かなコースで、長く険しい健脚者向けの様相となっています。
鍬ノ峰は、1年中登ることが可能ですが、冬は積雪地帯であるため十分な装備と経験が必要です。おすすめの時期は6月ごろで、険しい急登の登山道がピンク色の可憐な花々で彩られたシャクナゲロードを楽しんでみてはいかがでしょうか。
山の名前 | 鍬ノ峰(くわのみね) |
---|---|
標高 | 1,623m |
エリア | 上信越 |
詳細情報 | 鍬ノ峰の地図・天気 |
魅力その①北アルプスの大絶景
鍬ノ峰の魅力は、何といってもその立地からなる北アルプスの大絶景です。
餓鬼岳の北東、蓮華岳や針ノ木岳の南東に位置しており、北アルプス南側から、燕岳、餓鬼岳、唐沢岳、裏銀座方面が見え、北に針ノ木岳、蓮華岳、その向こうに鹿島槍ヶ岳があり、更には白馬三山まで、まさに北アルプスの展望台といった絶景が目の前に広がります。
振り返れば、大町・安曇野の田園風景に、北から雨飾山や火打山、妙高山、高妻山、東には美ヶ原に浅間山や四阿山、南に南アルプスや遠く富士山まで眺めることができます。
紹介してもしきれないほどに、鍬ノ峰から見える山々は多く、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
魅力その②シャクナゲやイワウチワで彩られる登山道
鍬ノ峰が人気の山であるもう一つの理由が、シャクナゲをはじめとした山野草の花々を楽しめる登山道にあります。
最も有名なのがシャクナゲで、毎年6月ごろに薄いピンク色の可憐な花を咲かせます。場所によっては、多くのシャクナゲが一斉に咲いており、”シャクナゲロード”や”シャクナゲトンネル”と呼ばれ、多くの登山者が楽しみに訪れます。
また、仏崎観音堂からのコースではイワウチワの群生も見ることができます。イワウチワは、春の訪れを知らせる花で”春の妖精”と呼ばれています。都道府県によっては絶滅危惧種にも指定されており、貴重な群生地の一つです。
急登が多く、展望の利かない鍬ノ峰の登山道ですが、時期になるとシャクナゲやイワウチワをはじめとした花々で彩られます。
魅力その③バラエティ豊かな登山道
標高1,623mの里山と言えども北アルプスの山の一つです。急登区間をはじめ、岩場やロープのついた箇所、笹薮に覆われた登山道もあれば、シャクナゲやイワウチワ、ヤマツツジの咲く色鮮やかな登山道もあり、バラエティ豊かな登山を楽しむことができるのも、鍬ノ峰の魅力の一つです。
鍬ノ峰メインの山旅もそうですが、北アルプスの憧れの山を目指して安曇野や大町、白馬に訪れた際には、ついでに登る北アルプス前衛の山に鍬ノ峰を選んでみてはいかがでしょうか。
鍬ノ峰の難易度別おすすめ登山コース
【白沢登山口ピストンコース】
①鍬ノ峰白沢側登山口→100分→②鍬ノ峰→60分→③鍬ノ峰白沢側登山口
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム※ | 2時間40分 |
距離 | 約3.3km |
累積標高 | 約565m |
難易度 | ★★☆☆☆ |
2つある登山コースのうち鍬ノ峰に登る際のメジャーなルートで、登山口からおよそ3時間もあれば往復することができます。ただし、急登区間が多く、一部に高度感のある岩場もありますので、里山トレッキングではなく、前衛といえども北アルプス登山といった様相です。
登山口は、大町市の南側にある国営アルプスあずみの公園(大町・松川地区)を通り抜け、林道を奥に進んでいきます。公園から3kmほど進んだ先に、餓鬼岳の登山口となる白沢登山口があります。2か所ほど、路肩に駐車スペースがあり、20台ほど駐車可能です。簡易トイレも設置されています。
さらに細くなる林道を奥に進んでいくと、1.5kmほどで鍬ノ峰白沢側登山口に到着します。登山口の少し奥に駐車スペースがあり、5,6台ほど駐車可能です。トイレ等の施設はありません。白沢登山口からは、歩いても片道30分ほどですので、細い林道の運転に不安な方は白沢登山口を利用すると良いでしょう。
鍬ノ峰白沢側登山口からは、主尾根に向かってひたすらに急登が続きます。登り始めは、階段が整備されており、登りやすい登山道となっています。林の中には、多くのシャクナゲが目立ち、時期になると美しいシャクナゲロードへと変化します。
30分ほどで高圧線の鉄塔の脇に出ます。下草が刈られており、急登続きで辛い方には格好の休憩適地となっています。
鉄塔からさらに急登を20~30分ほど登ると、標高1335m付近の主尾根に出会います。樹木の間から東側に広がる大町・松川の田園風景が見えてきます。この先の尾根道も急登が続き、途中にロープが設置されている区間もあるため、こまめに休憩をはさみながら登ると言いでしょう。
小ピークを右に巻き鞍部に下り、そこから再び急登が続きます。南峰までの主尾根上には、高度感のある岩場のトラバースや、ロープのかかっている急こう配の区間があります。いずれのロープもしっかりと整備されており、慎重に行けば問題はないでしょう。
南峰は、特に標識もなく立木で展望はありません。南峰からは、笹原の穏やかな道ですが、時期によっては腰から肩にかけての高さまで笹が伸びています。かき分けるようにして最後の坂道を登り切れば登頂です。
笹原のてっぺんにある山頂部は、立木がなく一気に視界が開けます。北アルプス南部の燕岳・有明山から、北は白馬三山まで眺めることができます。また、北信・戸隠の山々や妙高・火打、東は浅間山・四阿山、美ヶ原、南に南アルプスなど360度の展望が広がります。
【仏崎観音寺登山口ピストンコース】
①観音寺→80分→②1203m地点→160分→③鍬ノ峰→120分→④1203m地点→60分→⑤観音寺
必要日数 | 日帰り登山 |
総コースタイム※ | 7時間00分 |
距離 | 約8.6km |
累積標高 | 約1100m |
難易度 | ★★★☆☆ |
鍬ノ峰へ登るもう一方のコースで、2000年に地元高校生の山岳部生徒が開拓し、今でも整備をし続けているコースです。白沢側のメジャーなコースに比べると、距離も標高差も約2倍あり、北アルプス前衛の里山と言えど、決して楽には登れないコースです。
登山口は、大町温泉郷近くの仏崎観音寺から始まります。すぐ近くの蓮華大橋南の駐車場が利用できます。広く整備されている駐車場で、50台ほど駐車可能で、いつでも使用可能なトイレも併設されています。
仏崎観音寺の左手奥にある鐘突堂山道入口から、登山道へと進んでいきます。目の前にある、そこそこの急傾斜の階段を登り、鐘突堂へと到着します。ここからは、振り返ると大町・安曇野の風景がきれいに見えます。
鐘突堂から本格的な登山道となり、赤松の急登が続きます。ところどころに出てくるロープ区間や岩場をクリアしながら、主稜線を目指します。
樹林帯で展望のきかないものの、少し傾斜が落ち着き一息つける主稜線上を進んでいきます。しばらくすると、標高1300m手前から再び急登となります。登りきると標高1526mの小ピークとなり、傾斜もいったん落ち着きます。ここから山頂まで、残り約1kmほどです。
やがて、山頂直下の標高差100m弱の最後の急登となります。樹林で視界がきかなかったものの、最後は笹原に変わり一気に視界が開けます。あたりが笹原に変わったらすぐに登頂となります。山頂からは、今までの樹林に視界を遮られていた世界から一変して、すばらしい360度の大パノラマを堪能できるでしょう。
鍬ノ峰のQA
鍬ノ峰に関する質問で多いのは、登山ルートや気温・積雪などに関することです。このような質問について以下QAを紹介します。
鍬ノ峰の登山レベルは?初心者でも登れる?
鍬ノ峰の登山ルートは、白沢側からのルートであれば初心者から上級者の方まで、だれでも登ることができます。ただし、急登区間やロープのある岩場がありますので、経験者とともに時間に余裕をもって行った方が良いでしょう。
また、鍬ノ峰の登山道はよく整備されておりますが、一部に笹が茂っている箇所もあります。道迷いやルート外れには十分注意しながら登るようにしましょう。
鍬ノ峰の気温は?どんな服装で行けばいい?
鍬ノ峰のある大町市の月ごとの平均最低気温と最高気温を下記の表にまとめました。真冬には最高気温が氷点下となり、夏でも30度以下と比較的冷涼な気候です。
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
最高 | -1.6 | 2.8 | 7.4 | 15.0 | 20.8 | 23.8 | 27.2 | 28.5 | 23.7 | 17.7 | 11.6 | 4.8 |
最低 | -7.5 | -7.4 | -3.4 | 2.0 | 8.1 | 13.20 | 17.4 | 18.0 | 13.9 | 7.2 | 0.9 | -3.9 |
1日の寒暖差が激しく、脱ぎ着できる服装で対応する必要があります。夏でも日によっては冷え込む場合があるため、春や秋と同様に一枚羽織れる上着を持っていくといいでしょう。同時に、日中はとても高温になることもあります。熱中症対策も万全にして出かけるようにしましょう。
冬期間はしっかり冷え込みますし、長野県内でも豪雪地帯に位置しています。積雪直後などの深い時には膝上以上の積雪にもなりますので、冬期登山の際には十分な下調べと装備・経験が必要です。また、どちらの登山口までの道は積雪があり圧雪路や凍結路となりますので、こちらも注意が必要です。
鍬ノ峰で見られる山の花は?見ごろは?
鍬ノ峰では、晩春から初夏にかけて様々な山野草のお花を見ることができます。下の表に見ごろと一緒にまとめて紹介しますので、参考にしてみてください。
山の花 | 見ごろ | 山の花 | 見ごろ |
---|---|---|---|
イワウチワ | 4~5月 | イワカガミ | 6月 |
ミツバツツジ | 5~6月 | コイワカガミ | 6月 |
オオカメノキ | 5~6月 | ショウジョウバカマ | 6~7月 |
シャクナゲ | 5~6月 | イワナシ | 6~7月 |
登山口へのアクセス・各種情報
どちらの登山口へも、アクセスは車がおすすめです。冬季は、路面に積雪が合ったり凍結していることもありますので、十分にご注意ください。
白沢側鍬ノ峰登山口
登山口情報
長野自動車道の安曇野インターから、白馬村方面へ向かって北上します。大町市手前から国営アルプスあずみの公園(大町・松川地区)へ向かい、インフォメーションセンターの横を通り過ぎて林道に入っていった先に登山口があります。
まず、餓鬼岳への登山口である白沢登山口に到着します。ここまで舗装路で、2か所ある路肩スペースに20台ほど駐車可能です。また、簡易トイレもあります。
白沢登山口からさらに狭い林道となり、すぐ先の二股を右へ進むと白沢側鍬ノ峰登山口へ向かいます。1.5kmほど先の小さな橋を渡ると、路肩に駐車可能なスペースがあります。5,6台ほど駐車可能で、トイレ等の施設はありません。
登山口までのアクセス
安曇野ICから
安曇野ICから車で約45分(※下のGooglemapでは、手前白沢登山口までの道のりを表示しています。)
信濃大町駅から
信濃大町駅から車で約25分(※下のGooglemapでは、手前白沢登山口までの道のりを表示しています。)
仏崎観音寺登山口
登山口情報
長野自動車道の安曇野インターから、白馬村方面へ向かって県道306号線(北アルプスパノラマロード)を北上します。そのまま直進し続けると、右手に蓮華大橋のあるT字路に突き当たり、そこが仏崎観音寺登山口最寄りの蓮華大橋南駐車場になります。
広く舗装された駐車場は、50台ほど駐車可能で、いつでも使用可能なトイレが併設されています。駐車場奥の道路下をくぐり、さらに右手の道路下をくぐり抜けると仏崎観音寺になります。
登山口までのアクセス
安曇野ICから
安曇野ICから車で約35分
信濃大町駅から
信濃大町駅から車で約10分
鍬ノ峰周辺のおすすめ山旅スポット
心笑館
長野県大町市の山奥にある葛温泉から引湯している日帰り温泉施設です。大町温泉郷の中にあり、加温・加水なしの完全な源泉かけ流しの温泉が楽しめます。
いくつもの巨石を配置した大きな露天風呂からは、北アルプスふもとの豊かな自然に囲まれて、新緑や紅葉、雪景色といった四季折々の表情を満喫することができます。
焼きたてスコーンのお店Forest
大町市から黒部ダムへの入り口となる扇沢の方へ向かって、山の中へ入っていったところにある焼き立てスコーンがいただける小さなお店です。
完全予約制で、指定の時間に行くと焼き立てサクサクで中はフワッとした熱々のスコーンが用意されています。完全予約制と聞くと何か敷居が高そうに感じますが、スコーンの焼き上がり時間を指定するもので、とても感じの良い店主さんが焼き立てスコーンを用意して待ってくれています。